12/24 ローストチキンとケーキ
帰宅すると母氏がローストチキンの準備をしていた。夕方から焼いて夜に間に合わせるようだ。課題が終わるころにはいい匂いが家じゅうに広がっており、父氏がケーキを買って帰ってきた。テーブルに着くと、父氏が図書券をシンプルな封筒でくれた。
どこまでも平穏で、ありきたりなクリスマスである。
「女の子に思ってたのと違うって言われたって?」
「うん。まあしょうがない。眼鏡だし少し太ったし」
「太ったって……春臣さんバスケやめたときにどんぶり飯やめたじゃない」
「それでも動いてたころより1キロ増しだよ」
この話題は不毛だと思ったのか、父氏が、
「部活のクリスマスプレゼント、なんだった?」と聞いてきた。
「美顔ローラー」
父氏がワインを噴きそうになった。母氏は喉にチキンがつかえている。
「園芸部に誘ってくれた友達が、剣道やめたとたんに太ったらしくて。自分の欲しいものっていう基準で買ったらこうなったって」
「面白い友達だな」
「うん。園芸部の人たちはみんないい人たちだよ」
「なんていうか、受け皿って感じなんだな、園芸部だけに」
父氏の今ひとつ冴えないジョークに顔をひきつらせて、チキンをモグモグした。
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