12/20 ドンマイ

 さて、来年植えるものをどうするか。そういう話をしていると部室のドアがノックされた。有菜先輩が「どうぞー」と声をかけると、見覚えのあるエプロンをつけた女子が入ってきた。

 ――黒崎さんだ。どきりとする。

「あ、あの! 田島くんいますか!」

「自分です」

 口調がこわばる。黒崎さんはしばらくこっちを見て、

「……ええ……なんか思ってたのと違う」

 と、脳内ダダ洩れのセリフを発した。そんな、フリマアプリで変なものが届いたみたいな。

「あ、え、ごめんなさい。あの、これみなさんで召し上がってください」

 と、黒崎さんはシフォンケーキを残してそそくさと逃げていった。

「……ドンマイ」

 翔太氏が背中を叩いてきた。痛い。

 料理部のシフォンケーキは見事な失敗作だった。なんとなくしょっぱい。口直しに缶コーヒーを飲んだ。

「あ、ま、その、よかったでござるよ。クリスマスに雑念なく部活のみんなとプレゼント交換ができそうで」

「無理しなくていいって」

 翔太氏がまた背中を叩いてきた。痛い。

 まあ、好きになってしまう前に縁が切れてよかった。こっちが見せたくないって言っているドラゴンの絵を見たがる女の子は、やはり好きになれない。

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