12/3 好きなもの

 先輩たちと翔太氏にアドバイスをもらって書いた手紙を、黒崎陽菜さんの下足入れにいれた翌日。無事に返事が来ていた。

「ジ●リファンの男子って珍しいですね」

 さっそく頭のなかにナウ●カ原作の凄まじいい物語だとか「紅の●」のハードボイルドな設定だとか、もろもろの反論が湧いてきたが、そういうことを書いちゃいけないことは分かったので、家で少し悩みながら、

「宮●駿監督はわりと男目線でお話を作っているんですよ。それから黒崎さんの好きなもののことも知りたいです」と返事を書いた。誰も見ていないタイミングを見計らって下足入れにそっと入れる。

 どんなものが好きなのだろう。ワクワクして一晩過ごし、次の朝またもらった手紙を資料室で開いてみる。

「料理部に入っていて料理が好きです。ヘタクソですけど」

 ああ、太嘉安先生に失敗作を食べさせてるアレでござるな……と、深いため息が出た。

 しかし男子バスケ部の女マネじゃなくて安心した。というかもし女マネだったら名前を知っていたはずだ。

 訊かないわけにいかないので、

「得意料理はなんですか」と訊ねる手紙を書いた。ここでニシンのパイとかハム入りの即席麺とか切り返してきたら完璧にオタクなのだが……。

 毎日ニヤニヤが止まらない。ニコニコしながら返事を待つついでに、そろそろクリスマスプレゼント交換のプレゼントを探さねば、と、学校の帰りにショッピングモールに向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る