11/30 オタクの早口

 帰り際、そっと黒崎陽菜さんの下足入れに手紙を入れて、校舎を出た。

 第二体育館で活動している男子バスケ部をちらりと見る。みんな眉毛が薄い。その隅っこで、女子マネージャーらしき女子生徒たちがお守りを手縫いしていた。あの中に黒崎陽菜さんがいるのだろうか。

 次の日登校してくると下駄箱に返事が入っていた。誰もいない資料室でそっと開ける。やっぱり可愛い封筒にかわいい便箋。返事をもらえてうれしい、と書いてあって、自分の顔が緩むのが分かる。

「ト●ロ好きなんですか?」と書いてある。

 学校に持ってきていたト●ロのレターセットに、ト●ロが好きな理由を書く。可愛らしい話に見えるけれど主人公たちの母親は肺結核という重い設定だし公開当時の同時上映が「火●るの墓」だったこと。そこまで書いてオタクの早口のノリであることに気づいてその便箋を丸めてリュックに押し込んだ。

 これは先輩たちや翔太氏に相談しなくては。とりあえず手紙をリュックに入れる。

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