11/28 決勝3ポイント

 下足入れに入れられた手紙を見て真っ先にカミソリ入りを想像するも、重いものが入っている感じはしない。かわいい封筒で、かわいいシールで封されている。

「どーした?」

「手紙でござる」

 翔太氏は封筒を振って、

「刃物じゃなさそうだな」と、自分が考えたのと同じことを言う。

 恐る恐る開けようとすると、

「それは家に持って帰って開けるやつだ」と言われた。


 なんだろう怖い。とにかく急いで家に帰る。ハイベッドに学習机、でっかい本棚という家具屋の見本みたいな子供部屋の、ハイベッド下の秘密基地で封筒を開ける。

「田島春臣くんへ。中学のとき決勝戦で田島くんのチームに当たった三中バスケ部の女マネでした。田島くんの決勝3ポイントが忘れられません。よかったらお手紙のやりとりをしませんか。お返事をくださるなら向かって左端の下足入れの手前から3列目の真ん中にいれてください。黒崎陽菜」

 まさかのラブレターだった。自分になにが起こったかちょっと分からない。頭がぐるぐるした。

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