第29話
「――【
やぶ蚊の大群の如く視界いっぱいに迫る無人機の爆撃とミサイルを、漆黒の魔剣が機体共々刺し穿つ。暗黒魔剣が血のついた指で空をなぞると、分身は降り注ぐ攻撃をもろともせず、まるで意思を持っているかのようにそれらを追尾、迎撃して悉くドローンを撃墜していった。
空一面に、爆発による炎の円弧が打ち上げ花火よろしく瞬く。
(すごい……まるで、意思を持ったミサイルサイトだ。いや、そんなものじゃない。たったひとりでこんな数――まさか本当に、一個師団を壊滅させるつもりなのか?)
一騎当千ならぬ当万。それが魔剣の戦い方だ。ダーインスレイヴが攻撃態勢に入ったのを確認し、アロンダイトは周囲に電磁バリアを展開。攻撃の担い手を守る態勢に入った。
しかし、彼女と離れるにつれてバリアの装甲は薄くなる。光の速さで先陣を切るエクス=キャリバーのところまでは、
「キャリバーお姉様!!」
「アロンダイト、あなたの契約者……必ずあなたの手で守り切りなさい! さぁ、『聖剣』はここにいる! 姿を見せなさい、王を騙る不届き者!!」
『ッ奴を確保しろ……!』
ハワードの一声で、地上に配備されていた戦車が一斉に照準を定める。
こちらにバリアの使い手がいるのを知ってか、徹甲弾が積んであるようだ。
『撃てっ!』
砲撃の轟音が鳴り響いた、刹那――
「――【光煌剣 刹の閃】」
光が、風を斬った。
聖剣を取り囲む鉄の塊は一閃にして断ち切られ、爆発し、周囲に霧散する。
『前線拠点に奴が来るぞ! 何をしている!? 休まず撃てっ!』
『ダメですっ、次弾装填、間に合いません!』
『ええい、上空ドローン各機! 他はいい、目標を聖剣に定めろ!』
「――させるか。――【
ぐるりと反転し聖剣めがけて急降下する無人機を、今度は宙より出た漆黒の杭が十字に貫いた。一瞬にして鉄くずとなった機体が雨を降らせるかの如く視界を埋め尽くす。
「アロンダイト! 飛来する残骸に注意しろ! その雷撃で塵と化せ!」
「はいっ! ――【
アロンダイトが詠唱すると、電磁バリアを内側から透過して雷光が瞬いた。
「ドローンの数が減って視界が開けたわ! スコット、ハワードの乗った専用機は!?」
「将軍の専用機、専用機……!」
スコットには見覚えがある。入隊式典の際に、軍が用意したものでなく個人所有の真っ白で美しい機体で登場し会場をざわつかせたハワード将軍愛用の戦闘機。その光沢は光を反射し――
「あった! あの雲の向こうだ!」
「こっちの機体、接近させられるの!?」
「やってみる! けど、視界が……せめて雲が晴れれば……!」
『雲をなくせばいいのね!? 了解!!』
無線からクラウ=ソラスの声がし、スコットの操る戦闘機からタイトな軍服の美女が身を乗り出した。
「クラウ=ソラスさん!? 何を――!」
飛翔する戦闘機の背に生身のままヒールで降り立つクラウ=ソラス。その手には剣を握っているようだが、刀身が透明なのか、こちらからは視認することができない。
『クラウ=ソラス!? お前、幻影をメインで使う魔剣だろう!? わたちと同程度の物理的戦闘力しかないくせに……何するつもりだ!』
「うるさい安綱っ! 私だって軍の統括として国を任された責務があるのよ。これくらいの雲、私の奥義で――! だから、あんたと同程度とか言うんじゃない!!」
『ぐぬぬ~! 悪かったよぉ。色仕掛けとハッキングもできるもんな! きひひ!』
「褒めてないでしょソレ!? ったく……いいからしっかりベルトに固定されてなさい! いくわよ~!!」
(あの構え……見えないけど、剣を天に向かって掲げているのか?)
「光よ、在れ――【
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