第9話 助けに入ったまでは良かったんだけども……

 オイオイ、俺もかよと呆れるやら、余りの脳筋具合に落胆するやらしている内に、既に相方はがらくた置き場に有った角材を手に取って、性犯罪者達に躍り掛かっていた。


 どうやら、掛け声を出さずに奇襲するのが最良だと気付く位には頭が働いていた様で、最初の一激目は奴等の一人の後頭部に上手く食らわせられていた。


 だが武器にした角材は、細く軟弱だった様で一回の攻撃でもってポッキリと折れてしまい、思ったよりも効果を発揮しなかったのか相手を倒すまでには至らなかったみたいだ。


 奇襲を受けた感じになった奴等は、慌てて状況を把握しようと周囲を見渡していたが、そんな事をしている間に夢の中の俺は、がらくた置き場に有った行商人の背負い箱に付いていた背負い紐を引っ掴むと、勢い任せに持ち上げて振り回し、残りの一人の顔面に真正面から箱ごとぶち当てて吹っ飛ばしていた。


 夢の中の俺の攻撃は功を奏した様で、食らった相手は倒れたまま起き上がる様子が無かったので、棒で殴った後に取っ組み合いのケンカを始めていた相方に加勢しようと思ったのかそちらに振り向いたのだが、目に飛び込んできたのは襲われていた女性が大きな石を性犯罪者の後頭部に振り下ろす場面だった。


 グシャッという嫌な音を発した後、そいつは力無く倒れてその身体をピクピクと痙攣させていた。


 オウッ、シット。今のはたぶん致命傷だろうというのは、現実の俺でも分かる。


 うわー。自分以外の人が死ぬのをまじまじと初めて見たぞ。


 何も殺さなくても良かったんじゃないのかと一瞬思ったが、夢の中の俺はそれについて何も言葉を発しなかった。


 そして、それを行った女性の方の様子を恐る恐る窺うと、そこには酷く冷めた目で平然と倒れた男を見下ろすナニかが存在していた。


 そして、そのままジロリと俺達に視線を向けるナニか。


 コワー?! ナニコレ?! 何の罰ゲームだよ?!


 何で襲っていた男達よりも恐ろしく感じるモノと、一緒に居ないといけないんだよ?!


 ブルッと身体が震えるのを感じてしまったが然もありなん。


 暫くそのまま佇んでいると、この場所に全く似つかわしくない涼やかな声が響いてきた。


「助けに来てくれてありがとう。お陰で無事で済んだわ。」


 ニコリと笑った顔には、今起こった事など初めから発生していなかったかのような穏やかさが有った。


 助けた御礼を言われた相方は、ハッと気が付いた様な感じで「助けるのは当たり前だ。」とか何とか、無難な返事を返していた。


 と、いう所で夢の中の俺は、漸くこんな事をやっている場合では無かったという事を思い出したのか、ぎこち無く笑い有っている二人にさっさと此処から立ち去ろうと促した。


 それに否やは無かった二人も頷いて、三人で草むらの方に追手が来ないか注意しながら分け入って行った。






















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