第10話 逃げるは恥だが……

 此処で唐突だが、この話の登場人物の呼称を統一しようと思う。理由は今から言う。


 かねて前々から、『夢の中の俺』と『現実の俺』が同一人物かの様に思われていないかと危惧していたが、先般の脳筋の様な行動は断じて俺が取る物では無いという事を、皆にはハッキリと分かって置いて貰いたいからだ。


 あんな事をする奴と、同一視されているという事象を俺は全く看過出来るものでは無い。


 従って、個を区別する為に呼称を決定するのだ!


 という事で、先ずは『俺』は『俺』のままだ。一切変えるつもりは無い。


 そして、『夢の中の俺』は『ユメオ』と呼称する。


 ああ。勿論夢の中の俺にもチャンとした名前が有るんだけども、もし何かの拍子で名前を連呼でもしていたら、まるであいつがこの話の真の主人公の様ではないか。


 言って置くが、あくまでこの話の主体は『俺』であって他の何者でも無いのである!


 まあ、こんな事を今さら強弁していても仕方が無いので次に行くよ。


 それで、プレゼントを女性に贈ろうとしていた相方は『プレオ』、贈られる側の女性は『プレミ』とする。


 めっちゃ、ぞんざいな呼称で申し訳ないとは思うが、まあ本人達には絶対に知る術が無いし、夢の中で起こる事象には何も影響が無いのだからこれで良いのだ。


 とか何とか、俺が一人で決定している最中にも、ユメオ、プレオ、プレミの三人は俺達の村に向かって、隣村の奴等に見付からない様に、道を外れながらも急いで帰途に着いていた。


 あ、村の名前なんかもここで決めて置くか。


 俺達の村は『オレ村』、隣の村は『トナ村』とでもして置こう。


 まあ、後はその都度決めていくって事で。


 帰る道中、プレミに何であんな事に巻き込まれていたのか事情を聴く事が出来ていた。


 彼女は急な家の用事で、トナ村にお使いを頼まれて出掛けて来て、今回の事態に遭遇したようだ。


 お使いを頼んだ母親もいつも通りの様子で、何の心配もしないで送り出されたと言っていた。


 まあ、トナ村に関心を向けていたのは、俺達少人数だけだったろうからそれも当たり前だろうな。


 そんな訳で、ちょっとした散歩気分で向かったのだが、トナ村に入って直ぐに現れた四、五人の荒くれ者に捕まって、持ってきた荷物を奪われて、ついでにその内の二人に貞操まで奪われる寸前だったという事のようだ。


 うん。何も新しい情報とかは特に無いね。


 でも、そうか。問答無用に入村した全員を即、殺している訳でも無いのか。


 いや、まあ? 彼女に対して悪い事を致した後に直ぐ様、殺していた可能性が高い事は、勿論俺も分かってるよ?


 だが、出会って直ぐに殺すという程、切羽詰まっている訳でも無いという所が、ちょっと引っ掛かる部分ではあるな。


 そんな事を考えながら焦る感じで家路を急いでいたら、俺達とはかなり離れた道を走って来る集団の喧騒が聞こえてきた。


 漸くプレミに逃げられた事に気付かれた様だな。












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