第7話 今度はもっと慎重に行動しようとしたら……

 取り敢えず隣村に確認しに行くという行動は変える訳にはいかないので、途中で進路を変更する事で対応するように誘導した。


 まず、ある程度村に近付いた段階で、俺の第六感に従って俺達は道から逸れて草むらに分け入って、身を屈めながら慎重に進んで行く事になった。


 村の入り口が辛うじて確認できる距離を取って、大きく回り込む形で村の中の様子を確認する。


 同行している相方は、こんなにも慎重な行動を取るように言ってくる俺の事を訝しく思い始めている。


 まあ、それもしょうが無いよな。俺が同じ立場だったら、もっと疑ってたと思うぞ。


 遠くから見ていても良く分からないからと、近くの家に裏庭側から少しづつ近付いて行くと、何やらがらくたが散乱しているのが視認出来た。


 うん? なんか見覚えがあるようながらくただなぁ、なんて呆けたことを考えていると、相方が何かに気付いたのか、えらく驚いている。


 うん? 何だ何だ? 何が有った?


 夢の中の俺には、相方が驚いている理由が全然分からなかったのか、前と横を何度も見返す様に視線を彷徨わせていた。


 かくいう俺も全然何でか分からなかったので、首を傾げる感じで事態を窺っていたら、ボソッと潜めた声で理由をつぶやいてきた。


「おい。あそこに転がっている壊れた木箱の様な物って、行商のおっちゃんの背負い箱だぞ。横に描かれている行商人認定の紋章に見覚えが有るだろ? 」


 そう言われて木箱を改めて良く見てみると、夢を見ている側の俺でも覚えていた紋章が、確かに描かれている。


 更に木箱に注目して見ると、大事な物を仕舞っていた引き出しの部分の鍵が壊されて、こじ開けられているのも確認出来た。


 ここまで来ると、事態は最悪な事になっているようだと簡単に予測できる。


 即ち、最低でも行商のおっちゃんは何者かに既に殺されていて、そして荷物は全て奪われているって事をだ。


 何でそう言い切れるのかと言うと、行商の背負い箱の横の紋章の部分は認定証の役割もあって、もし箱を取り替えるとしても其処だけは切り取って、新しい箱に移す必要があるからだ。


 それをぞんざいに扱って捨てているなんて事は、行商人として決してする訳がないと断言出来る。


 二人はここまでの事を理解して、漸く事態がかなりの大事になっているのを自覚したようで、隠していた身体を更に低く屈めて縮こまった。




 ふぅ~、やっとかよ。


 漸く現実の俺と夢の中の俺とで、危機意識の共有が図れた感じかねぇ。


 でも、まだまだ事態は始まったばかりと言うか、始まってもいないというかの段階なんだけどなぁ。


 さて、此処からどういう風に持っていけるかによって、今後の展開が大きく変わってくるぞ。


 更に気合いを入れ直して対処して行かないとな。











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