第4話
精霊であるエステルは、今は眠っているが先程まで絶叫して泣きじゃくっていた愛し子たる主人の頭を、静かで慈しみのこもった手つきで撫でた。
「《………アイーシャ、もう少しだけ待ってね。そうしたら、あなたのお爺さまがあなたの秘密をちゃんとお話ししてくれるから。そうしたら、………あなたは自由になれるわ。魔力がないからと虐げられることも、馬鹿にされることももうないわ。だから、今はゆっくりお休み。優しいあなたを傷つけたこの国への仇はわたし達がちゃんと取っておくわ。だから、もう泣かないで》」
未だに涙を流し続けるアイーシャの顔の前にふわりと飛んだエステルは、小さな手でポロポロと溢れる涙を、アイーシャの涙が枯れるまでずっとずっと拭い続けた。
「《ディアン王国、わたし達のアイーシャをこんなに泣きじゃくるまで傷つけたこと、後悔なさい!いくら助けを求めてももう助けてあげないんだから!!》」
ぐっと小さい手を拳としたエステルの周りに、いくつもの輝きが浮かび上がった。
中でも強い輝きを持つ、エステルを含む6人の精霊は、人型をしていて声を発することができた。
「《アイーシャを傷つけた愚かな国になんて、もう加護あげな~い!!》」
水色の輝きを放つ可愛らしい男の子の精霊がほっぺを膨らませてイライラしたようにぷいっとそっぽを向いた。怒っている様子も大変愛らしい。
「《私も~!!》」
「《僕も~!!》」
赤い輝きを放つ派手派手しい容姿の女の子の精霊と、緑色の輝きを放つ柔らかい容姿の男の子の精霊が元気よく水色の精霊に反応して手を上げた。
「《ねぇねぇ、そんなのじゃ生優しいから、呪いをあげようよ~!!》」
オレンジ色の輝きを放つ元気のいい女の子の精霊が楽しげに発案した。
「《いいね、いいね~!!さんせ~い!!》」
黒の輝きを放つのんびりとした雰囲気を持つ男の子の精霊が足を組んだ格好で浮遊して言った。
「《僕も~!!》」
「《私も~!!》」
緑と赤の精霊はまたまた大きく手を上げた。
「《じゃあ、みんなの魔力を弱くして~、》」
黄金色の精霊であるエステルがくるんと飛んで言った。
「《地震を起こして~、》」
次に、オレンジの精霊がターンをして言った。
「《洪水を起こして~、》」
水色の精霊が嬉しそうに首を傾げて言った。
「《火山の噴火を起こして~、》」
今度は赤い精霊が両手をわぁっと広げて言った。
「《竜巻を起こして~、》」
緑の精霊がゆらゆらと横に揺れながら言った。
「《太陽を隠して~、》」
またまたエステルがくるんと回って言った。
「《闇で支配しよ~う!!》」
黒の精霊が後ろからエステルに抱きついて言った。
「「「「「「《オー!!》」」」」」」
こうして精霊達は主人を苦しめた国であるディアン王国を苦しめることに決定した。
「《あ、でも、夫人?は傷つけちゃダメだよね?》」
「《そうかも~、アイーシャは夫人のこと大好きだからね~》」
エステルと黒の精霊の言葉に、他の精霊達は皆一様にう~んと悩み込んだ。
「《夫人を逃したら?》」
「《おぉー、フーの言う通りだね!!夫人?を逃がそう!!》」
「「「「「「《オー!!》」」」」」」
こうして、ディアン王国はアイーシャがいなくなった途端に衰退への道に歩みを進めることになった。
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