親友と幼馴染

 「ったく、朝からなんだったんだあいつ」


 麗凪が先に走って行ってしまった後、俺は1人虚しく登校していた。

 ただでさえ学校が嫌いなのに1人だと余計に嫌になってしまう。


 「おはよう、千尋!今日は麗凪ちゃんと一緒じゃないの?」


 「先に行った」


 こいつは島津悠斗(しまづ ゆうと)。一応、俺の親友?うん、多分。スポーツ万能、成績優秀で誰にでも優しいモテモテイケメン野郎。つまりリア充ofリア充。訂正、俺の敵。


「珍しいね、いつも一緒に登校してのに」


「たまたまな」


「昨日はどうだったんだ?」


「え?なにが?」


「え?ってお前昨日別のクラスの子から呼び出されてただろ?」


「ああ、もちろん丁重に断らせてもらったよ」


 なんでこんなリア充と俺が一緒いるのがが気になってしょうがない君たちに教えてやろう。

 こいつは…………ホモだ。


 「だから、違うって」


 「おい、心を読むな」


 「違いますぅ〜、表情を読んだんですぅ〜」


 ウザイ。

 まぁ確かにホモは言い過ぎた心の中で謝っておこう。


 「いいって」


 「おい」


 話が逸れた。何故こんな奴(リア充)と一緒いるかだったな。

 こいつは人よりちょっと男が好きだって言うだけだ。そしてこいつのタイプがたまたま俺だったってだけだ。このことを知っているのは俺だけらしく周りには言っていないらしい。

本人はバレてもいいみたいだがその場合俺までホモ扱いされてしまうから絶対に言うなと釘を刺してある。ちなみに俺はノーマルだから。男になんて興味ないから。

 俺としては早くこいつに彼女ができて欲しいところだ。じゃないと俺が危ない。


 「で?、誰に告られたんだ?」


 「えっと、6組の佐々木さん」


 「あれ、先週もその人じゃなかった?」


 「うん、そうだよ」


 「え、2週連続!?」


 「そだよ」


 振られた次の週にまた告るとかメンタル強すぎな奴か、自分に相当自信のある奴なんだろうな。


 「お前はよく告られるな」


 「まぁ女の子もいいけど千尋に告られたいな」


 あー、今のセリフ女の子から言われてぇ


 「お断りだ、つかキモイ。ホモじゃないならそういうことを言うのをやめろ。」


 「結構はっきり言うね、全然いいけど」


 なんてくだらない話をしながら教室にはいり、自分の席に着き一息つく。

 そしてユウは、教室に入るなりもう他の奴らに囲まれている。

 さすがリア充。

 そんなことを考えていると急に背中に激痛が走る。


 「いっだ!!誰だ!」


 誰だ!なんて言っているはいるが犯人は一人しかいない。


 「わ、うるさっ、朝からでっかい声出さないでよ」


 こいつは萩野 海優(はぎの みう)、幼稚園の時からずっと同じ学校で俺はコイツと幼馴染って訳だ。


 「お前が絡まなきゃいいんだろ」


 「なにをー私が話かけなきゃボッチのくせにぃ〜」


 「うるさい」


 こいつはいきなり話しかけてくるあたり人当たりが良さそうに見えるが……というか実際はそうなんだろうが俺にだけは違うようで俺が嫌なことを平然とやってくる。

 つまりこいつは俺の事が嫌いだから今もこうして俺をいじめるためだけに話しかけている。

 さらにコイツの俺の嫌いようがハンパじゃないようで最近はいじめのハードルが日に日に上がってきている。        

 ホント俺はどんだけ嫌われているんだか。


 「だから〜、別に嫌ってないって言ってんじゃん」


 「なんで俺の周りには人の心を読めるやつばっかりなんだよ!」


 「好きだから?」


 みんな勘違いするなよ、コイツはこう言って

俺が本気にしたら「え、本気にしてんの?ないわ〜」とか言って周りに言いふらすんだ。

 絶対にそうだ。

 コイツはやりかねん。


 「いや、意味わからんし寄るな」


 「その言い方さすがにひどくない?こんな美少女が冴えないアンタに話しかけてあげてるんだから感謝してくれてもいいんじゃない?」


 「頼んでもないことをするな、後自分のことを自分で美少女とか言うな。てか、お前はよく好きでもないやつに好きとか言えるな」


 「ホントに好きだよ?」


 「諦めろ、俺は引っかからないからな」


 「チッ、さすがに無理か」


 「お前と何年いると思っているんだ」


 ったく、なんでこいつは嫌いな奴と何年も一緒に居られるんだか。

 そんなに俺を困らせたいか。


 「でも…も、もし…もしだよ?今言ったことがホントだったら?」


 「え…?」


 顔を下に向けて微かに肩が震えている。

 ま、まさかホントに?


 「お、お前」


 「なーんちゃってー!信じた?ね?信じた?信じてたよね?」


 うっっぜぇぇー!!!!

 少しでも信じた俺が馬鹿だったわ。


 「やっぱ、気づいてないか」


 「ん?なんか言ったか?」


 「あ、いや、ただチヒロがバカだな〜って」


 「わざわざ聞かなきゃ良かった」


 「君らはホントに仲がいいね」


 話を終えたユウが話に加わる。


 「これを仲がいいと言えるお前は絶対におかしい」


 「僕から見れば羨ましい限りだよ」


 「ユートは男女問わずいっぱい囲まれてるんだからいいでしょ?」


 「それとこれとは別だよ」


 「てか、チヒロとユートっていっつも一緒にいるよね?二人とも全然キャラが違うのになんで?」


 「え、えっとそれはだな」


 「何言ってんの海優ちゃん、友達なんだから理由なんて必要ないでしょ?」


 おお!凄いなユウ!さすがリア充!こういう時の回避が上手いな。


 「まぁ、それはそうなんだけどさ、ホントにずっと一緒じゃん?だから実は出来てるんじゃないかと思って」


 「そんな訳ないよー……………まだね」


 「だよねーそんなわけないか」


おい、こいつ言いやがったな。

 幸い海優には聞こえてないみたいだか。


 「え?今「まだね」って言わなかった?」


 うわ、聞こえてた〜

 俺の会話スキルでは、これはどうにも出来ん!

バレないようになんとかしろ!と目で訴えかける。


 「ね?ちょっとなんで2人で無視すんの?」


 ほら早くフォローしろ!


 「いや、言ってないよ?」


 お前それだけかよ!

 そんなん俺でもできるわ!!そんなんでこいつが信じるわけないだろ!!


 「そ、そうだよね!聞き間違いか、」


 あれ、こんなんで信じるの?こいつ以外とアホだな。


 「ちょっと、今失礼なこと考えてるでしょ」


 「いや、だからなんで分かるんだよ」


 「っとそろそろ先生来るから席に戻るね」


 「あ、私も戻る〜」


 はぁ、朝から騒がしい奴らだ。

 ま、こんな朝も悪くないかと思う俺であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺の周りは俺のことが嫌いな奴ばっか! 紅鶴 かたあし @koukaku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ