第19話 気になる彼女らは、犬猿な家柄
まえがき 印象最悪から好転したらしい
コンコンと優しいノック音がする。聞き慣れた足音だし、たぶんアンナかな。朝一番にアーデルハイト様じゃなくて良かったわね……
「アンナね? 入っていいよ!」
「先に謝罪しておきます。ごめんなさいミーア様」
なんと驚くべきことに、扉の先には二人の男女がいるではないか。アンナとアーデルハイト様。悪い夢であって欲しいけど、彼の威圧感はきっと現実よね。
私を悩ませる彼は、威圧感はありながらも奥ゆかしく部屋に入ってくる。……おかしい! いつもならグアッハハハ、みたいな雰囲気なのに!
「アンナは外で待機していろ。すぐに終わらせる」
アーデルハイト様は私に近づこうとせず、遠く離れた扉の横からベッドの上の私を見ている……
うぅっ、せめてアンナは近くにいて欲しい。出会って何日なのに、もうアンナなしには朝を迎えられないというのに! いい感じにカーテン開けてくれるし、いい感じにご飯も持ってきてくれるの。
「えっと、その、昨日は避けたりしてすみませんでした……」
動揺なんかしなきゃよかった! この家(グロスター)相手には、変な行動ばっかりしちゃう。馬車のときだって、アンナのときだって、さっきのアーデルハイト様相手にも!
「いや、あれは─オレに非がある。だからまぁ、気にしないで良い」
「「……」」
き、気まずい……無言がこの部屋を漂っている。それはもう、シーンって音が聞こえてくるほどに沈黙だ。目を合わせようにも、合ったら合ったで右下に視線は逸れてしまう。
「……まず言っておくが、オレは浮気したわけじゃない。謝罪の意味で、あー、一緒の部屋にしたいと思ったわけでない。それだけは覚えておけ」
言いよどみながらも、彼は言葉を続けてくれた。じゃあ、これから浮気するからって謝罪の意味なのかしら。そんなことを考えると、妙に気持ちにモヤがかかる! 感情って面倒くさいわ!
「じゃあこれから浮──
「そうでもない……なんだ、オレは初めてなんだグロスター家以外が気になるなんて。だから一緒の部屋にしたかっただけだ。……返事は今日中じゃなくて良い。好きなときに来てくれ」
そのまま返事を聞かずに帰ってしまった……
もしかすると、私ら夫婦は初めての経験同士ってこと!? それもう理想の夫婦じゃん。……って冗談すら口に出来ない。
「お食事置いておきます。わたしは外を走ってきますので」
アンナは走るのにハマっているのかしらね。でもそんなに短いスカートは、辞めたほうが良い気がするけど。辞めたほうが良いと言えば、アーデルハイト様……朝一番に女性と会うって配慮がないわ! まあ、アーデルハイト様を避け続けた私もないんですけどね!
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