第18話 変人領主とわからない人

まえがき 会話続きありますが、そういうギャグと思って下さい。




 私の張り上がった声は部屋の中で響いている。別の部屋だ、とか言われたと思いきや今後は一緒の部屋?! どういう風の吹き回し?


「……その、なんだ、返事はどうなんだ? ミーア」


 名前で呼ぶなんて……絶対怪しい……! やましいこと隠しているんだわ、きっと。まさか浮気? いやいや大丈夫。もうじゃんじゃんと側室とか愛人とか増やしちゃってよ!


「領主様! 私……浮気とかなんにも感じませんから! 気を使わなくても大丈夫なんです!」


 言いくるめられてしまわない内に出ていこう。失礼しました、と言ってから部屋を抜け出す。やっぱり名前で呼ばれるって嬉しいけど、すっごく怪しい。わざわざ夫婦が別の部屋って、浮気しますけど許せってもんでしょ? いやいや許しますって! 政略的な結婚ですし。


 でも、なにかが心に引っかかりがある気がする……


「そうじゃない!」


 ……さっきいた部屋から怒声が聞こえるけど、放っておいて大丈夫かな。まぁ、自分の部屋に戻りましょか!



 見慣れた部屋のベッドで一息付いているはずなのに、どうにも落ち着かない。アーデルハイト様の浮気が原因ではない……と思う。自分じゃ釣り合いもしないし、高望みもしてはいけないしね。


 でも、気分は沈んだままだ。


「はぁ……」


 ゴンゴンと荒々しいノックが聞こえる。アンナとかジューナ様ではない音。アーデルハイト様だったら困るけど……


「おい、ミーア。絶対勘違いをしているぞ。だから出てきてくれ」


 悪い予想が的中してしまった! こんな状態で話し合っても困るんですけど……


 いつの間にか後ろにいたアンナと目が合う。やっちゃってください、アンナ!


「領主様。ミーア様はエメとお茶会をしているらしいです。一階で楽しんでいるようですね」


「あぁ、助かる」


 下へとかけ急ぐ音も荒々しいかった。離婚なんて出来ないんですし安心してほしいけど……それにしてもアンナは優秀ね。私のしわ寄せのエメも心配だけど、頑張って頂戴……!



「お茶会なんてやってないじゃないか。ミーアは一体どこにいるんだ!」


 一階から最上階まで往復してきたのかしら……まだ会いたくないから、ごめんなさい……アンナよろしく!


「いえ、エメは隠しています。辛抱強く問いただして下さい」



「本当に知らないと言っているが、一体やつはどこにいるんだ!」


「それほどエメは彼女を独占したいのです。問いただしが足りないようですね」



「泣いてしまったぞ……早くミーアに言わないといけない気がするんだ!」


「今は庭園にいるそうです」



「……いなかったが」


「エメと散歩してくる、と申しておりました」



「……」


「お休みになられております」


 ……という風に、アーデルハイト様はアンナに良いようにされてしまった。一番の被害者は私でも、アーデルハイト様でもなく、エメだわね。うん、まぁ、ごめんなさい。


 夕飯以降は、気を使ってくれているのか訪問はなかった。さすがの優しさに尽きるわ。でも、どうにもこのモヤモヤ感は薄れない。まさか、ホーエン家に心残りが生まれた!? 余計にモヤモヤしちゃうじゃないっ!


「ハァ……どうしたのかしら、私」










あとがき アーデルハイトくんの心境を次回写します

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