第17話 アーデルハイトの考え

 エメは居心地悪そうな顔のまま扉を締めていった。見られた私も可哀想だし、見ちゃったエメも可哀想ね……とりあえずアーデルハイト様が呼んでいるみたいだし、行きましょうか! どこか不機嫌そうな部屋を尻目に、階段を下っていく。



「うーんと、確かこの部屋だったっけ? この屋敷広すぎてわからないのよね~」


 おぼろげな記憶を頼りに辿り着いた先は、金と銀、いろんな宝石が飾られた扉だった。扉には『領主の部屋』と刻まれた宝石と宝石が、組み合わされたものが立てたれている。うん、自己主張が激しいな! このグロスター家の領主様は! やりすぎなくらいに宝石たっぷりだし、名札も宝石だし!


「ミーア様。ちゃんと伝えておきましたよ!」


「まぁ……ありがとう?」


 豪華な扉から出てきたのはアンナ。屋敷内は流石に走らないのか、汗はかいていないように見える。


「アーデルハイト様がお待ちのようですので、どうぞ」


 アンナは空いていた扉を維持し続けてくれた。その先には、ひどく気分の悪そうな人がいる。そう、アーデルハイト様だ。椅子に座っているけど、親指を額に乗せ、眉間にシワを寄せていた。でも、アーデルハイト様は私に気づいていないのかしら? ブツブツと呟いて、辛そうにしているわね。


「クソ、ヤツにどうやって謝るべきなんだ。偽物でも良かったのに、本物は本物で面倒くさいな」


 ……? 謝るって、もしかして私に? しかも、偽物でも良いってどういうこと!? いやいや頭が混乱しちゃう……あっ、目が会っちゃった。


「……来たか。とりあえず入れ」


「えっと、失礼します」


 彼の部屋に入り、まず目に飛びついたのは絵画だった。アーデルハイト様をそのまま小さくした子供と、威風堂々たる男性の絵。たぶん、グロスター家の親子の絵ね。


 あと、この部屋には不満点がある。


「(椅子がない……)」


 自分用の椅子しかないようで、私には座る椅子がない。これじゃあ立って話を聞くしかないわね。大きい絵画と豪華な机、そしてたった一つに椅子。加えて、見たこともないような王様専用のようなベッド。


 椅子がないと言っても、アーデルハイト様だけ立つっていうのもねぇ。脚が疲れないうちに用事が終われば嬉しいなあ。


「あー、なんだ。その、お前は偽物でなかったみたいだ。ホーエン家の血を持っているはずだ。で、ここの者はお前を気に入っているようなんだが……」


「はぁ……」


 鮮やかな椅子に座っている彼は、机に置かれている二枚の紙を眺めている。アンナから見せられた家系図と絵だと思う。それよりもう疲れてきたからか、腑抜けた返事しかできない! 椅子はせめて二つ用意してくれ!


「気にかけてしまう気持ちも分からないでも……いや、そうじゃない。とりあえず、夫婦の部屋を作らないか? 二人の」


「え? え?!」






あとがき ミーアちゃんはその提案をどう思うのでしょうか!


 

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