第11話 人は中身!
まえがき 今回は普通に主人公ちゃんの視点です。いちばん最後にアーデルハイトくんです。
<五日目>
例の裏道を通りながら思う。私が気づかなかったのが悪いけど……この道さぁ、あやしすぎるって! まだ昼間なのになぜが薄暗いし、白骨死体もあるし! 右の後ろをチラリと見るとアンナがいた。俯いているせいか顔の様子はわからなかった。
意外とアーデルハイト様ってこういう隠れたお店が好きなのかしら。骨董品とか好きそうだし、やっぱりこの裏道が正解?
「えっと~あとどのくらい歩けばいいの?」
「……」
彼女へ向けた質問は無言で返されてしまった。考えているだけかと思い歩きながら待つ。……え? もしかして無視されてる? まぁ慣れっこだから気にしないけど、せめて距離くらいは知りたいよ!
急に私の足音しか聞こえなくなった。どうして立ち止まったのか気になり、彼女の方へ向くとこちらを見ていた。
「ミーア様は、ホーエン家の娘なんですよね。たった一人の……」
たった一人の、本当の娘ならば妹のエリザベスだろう。一応ホーエンの血は繋がってるはずだし、アンナの質問に違うと答えても可笑しな話。言いたくないけど、そうですとしか答えられないわよねー。
「そうだけど……って、え?」
なぜかアンナはコインを取り出し、道の奥の方に投げる。コインはチリンと二回ほど音を立て、少し走って倒れた。意味不明がすぎるんだけど! そんな私の(心の中の)主張をよそに、アンナは言葉を発する。
「わたしの母はお前のせいで……」
その瞬間、二人組の男が現れた。一人はナイフを持ち、一人は古そうな木の手錠を持っていた。明らかな非常事態だ。若い女性が危険な道を歩いているから襲われたと思ったが、様子が違った。
「あー本当にいい仕事だ! お金まで貰えて女を襲えるなんてよぉ」
「しかも生きてさえいりゃぁ、なっんでもしていいんだろ! 殺さねえように注意しねえとな!」
……ん? もしかするとこれ、私がターゲット? だって生きていないとホーエン家とグロスター家の仲良しの証にならないし。
でもさぁ、私が標的なのにアンナが一緒にいるって危ないでしょ。たぶん私を捕まえて、「あっ目撃者は殺すかぁ!」ってなるでしょ!
「……」
ほら! アンナってば俯いたまま震えてる! とりあえず私が生存できるのは確定してるし、アンナを逃さないとマズイ! でもどうやってアンナを逃がすことが出来るのかな……
「ちょっとまって。私だけが目的なんでしょうね」
グスタフ(父さん)の横で書類整理してたから身につけていた交渉術。それでなんとかアンナを逃がすしかない。アンナを見ると驚いた顔をしていた。ふつうそうだろう、抵抗もせずに相手に良いようにされるんだから。やっぱり家の中が安全だし、やすやすと外に出るんじゃあなかった……!
「あぁ”……なんだよ、まさか隣の女を身代わりして見逃して~とでも言いてぇのか!」
「げっへへw まぁその方がいろいろ楽だけどよぉ」
なんとまぁありがたいことに、狙いは私だけだった。この様子だとアンナは酷い目に合わなくて済むし、私は生きて帰れるし……すごく幸運ね! アンナの無事さえ分かれば、ババッササッと逃げられるかもだしぃ!
走れる準備をしつつ彼らの元へ。
「まぁ一応だけど気絶はさせてもらうぜぇ」
男が私めがけて殴りかかってきた。目を閉じて、また開けたときには目の前が地面であった。しかもぐらんぐらんと視界がぼやけてる。あと少しで意識を手放してしまう……
「──は中止よ──」
「──!!」
「お金は渡す──帰──!」
男女が言い争う場面を見て終わってしまった。
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目を覚ますと誰かの太ももに頭を預けてしまっていた。その太ももの持ち主はアンナで、今まで見たこともないような心配してる顔だった。
「あれ……私なにしてたんだっけ。ねえアンナ、もしかして私倒れちゃってたの?」
「い、え何でもありません。お昼になるのでレストランにでも入りましょう……そのあとは服屋さんに行って──きれいなドレスを買いましょう」
彼女は私の手を引っ張り、いい匂いのするお店に連れて行く。……あれ? 気絶する前になにかあった気が……
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「お金はアーデルハイト様から頂いてあります。好きなドレスを買っていきましょう」
「ほら、これなんかお似合いですよ」
「──」
彼女は何度も話しかけてきた。少しずつだったけど、私の疑問はどこかへ行き彼女と楽しむことにした!
「ふふっ、これアンナも一緒に着ようよ!」
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おいおい……どういうことなんだ。アンナがミーナをどこかに連れて行った……よし、ここまで整理がついている。それでミーナの額に治療の後がある……これはアンナが肉体的に与えた傷だろう。でもって、仲良くなってる二人とおそろいのドレス。
え。え?
「ねえねえアンナ。家でもそのドレスで大丈夫なの? 侍女用のドレスじゃないとダメじゃないの?」
「はい、まっったく問題ありません。当主様(アーデルハイト)の許可は得ました」
いや聞かされてないが!
「ミーナ様、今晩お部屋に行ってもよろしいでしょうか」
「えっえ?!」
「まっったく問題ありません。当主様の許可はあります」
いや許可与えてねえよ!
本当にどうしよう。あと二日で両親が帰って来るんじゃないか? グロスター家の侍女が懐柔された……って言えるわけない! あっあぁ、頭痛が……頭痛が……今日はとりあえず寝よう。もう知るもんか!
あとがき 六日目はアンナちゃんメインです
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