第10話 あやしいお買い物…
まえがき アンナちゃんは四話目に登場した人物です。注意点は最初に三人称になってます。あと長めになっちゃったので次回まで五日目です。
<五日目>
早朝、アーデルハイトと侍女のエメが艶やかな部屋で話し込んでいた。
「エメ……今日からアレ(ミーナ)に食事を運ばなくていいぞ。まさか部屋から出してしまうとはな」
アーデルハイトは怒りに満ちていた。声もおどろおどろしく、眉間にシワがあり目を尖らせていた。座っている彼とは対象的に立っていたエメは、当主(アーデルハイト)の機嫌を損ねないように頭を下げたままであった。
「すみません……としか言葉が……」
「まあいい、人には向き不向きがある。それに理解を示すのが当主だろう、ただ配膳役は降りてもらう。かわりにアンナをその役にする」
終始エメは頭を下げたままであったがアーデルハイトの依頼を聞き入れ、ごめんなさいごめんなさい……そう呟きながら退出した。エメの通ったあとはじっとりとした、綺羅びやかな部屋にふさわしくない空気があった。
「貴族嫌い、ホーエン嫌いだからさっさとアンナを使えば良かったな。数日で両親が帰ってくるからなんとかせねば……!」
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珍しいことに当主(アーデルハイト)様が私の部屋にやってきた。外に行ってこいとか、部屋から出るなとかいろいろ命令されてきたけど……どうやら当主様は暇人? けど気になるのは朝食を持っている。いつもならエメが持ってくるけど、エメの体調が悪いのかしらね?
「今回は俺が食事を持ってきたが、次からはアンナという者がやる。拒否権はない」
「あの、エメは体調を崩したということでしょうか?」
私がエメへの心配を口にすると、当主様は下唇を噛んでいるようだった。たぶん口答えしたことが気に入らないのかな。いやーでも、やっぱり心配しちゃうし!
「他者への心配か……彼女の体調が悪いわけじゃない。そんなに心配なら見てくれば良い。じゃあ食器の取り下げからアンナがお前の侍女になる。いいな」
まあしょうがないよね! 今は目の前のご飯に集中しよう。それにしてもアンナか、どこかで聞いたような……ホーエン家でも耳にした気が……
トントン
一時間ほどしてドアがノックされた。いよいよアンナとご対面!
「アンナです。よろし─
「よろしく! アンナ!」
部屋に入ってきた瞬間に手を握ってブンブン振り回したせいか、アンナは仏教面で嫌そうな顔をしていた。
握手しながらブンブン振り回しながらアンナを観察する。んー、おっ私に化粧してくれた人だ! みんないい人ばっかりね、グロスター家!
「……は、い。よろしくお願いします」
あの化粧直しのときは睨んできたり、恨み言をつらつら言ってたけど……その影はひそめていた。アンナは金混じりの髪色で、服装は侍女らしいドレスでなく丈は短く、すこしだけ足を露出していた。真っ白で羨ましいね! こっちは青あざだらけだわい!
「あぁご夫人、当主様からお買い物を頼まれておりまして、お許しを頂いてあるので一緒にどうでしょうか」
「え、本当に!」
「はい……急いでほしいと言われてるので、食器を取り下げたらすぐに街に向かいましょう……」
私は快諾した。そう誰かと一緒に買物をするというのが夢だったせいで……彼女が怪しい笑みを浮かべてることに気づけなかった。まさかあんな怖い目に合うなんて……
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「どうして裏口から買い物に行くの?」
私は気になる疑問を何回も口にしたが、アンナは無言のままだった。ついには街にまできた。
「この裏道を通ると近道なんですよ」
やっと喋ったかと思ったら辺りは人が全くいなかった。街までの道が長くてうつむきながら来たせいか、ここは街の判断すら危うい、まるで浮浪者がたくさんいるような場所に来ていた。いやいやどう考えて怪しい!
「え、いや─
「信用できませんか。グロスターの人間は」
おいおい……ここで行かないなんて選択したら感じ悪いじゃん……アンナの顔も逆光でよくわかんないし。
仕方がないので、この裏道を通ることにした。ひどい目に合ったとしても悲しむ人いないし別に良いかっ。
あとがき アンナちゃんは貴族が嫌いというより、ホーエン家が嫌いなだけです。理由はまた今度!
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