第7話 グスタフの失態

まえがき 三人称は今回で終わりにするので耐えてください。次回は主人公ちゃんに移ります。




 ある貴族の男たちが会話をしていた。


「グスタフさん、さっそく本題に入りましょう。我々との貿易の未来について聞かせていただきたいです」


 しかし、そう聞かれているグスタフは落ち着きがなかった。いつもミーナに整理させてたはずの資料が見つからなかったのだ。事務的な内容を話しして間を持たせている。


「あ、ああ。そうだな……やっぱり君たちとの貿易は続けていくつもりでだな。それは……未来があるからな」


「どうしてそう煮えきらないような口調なのですか? 世間話をしに来たわけでないので、意義のある内容をお願い致します」


「(なんでそう威圧的なんだ! 低俗な家はこれだから……って早く出来損ない(ミーア)にまとめさせてた資料を見つけないと…!)」


 グスタフが困り果てていた理由は収益や細かい情報が書かれた資料がないことだ。グスタフは頭が良い。具体的な数字は覚えているが、証拠がない。資料はその証拠であり、いつもミーアに書かせていた。


「急かしてしまい申し訳ありません。時期が悪いようですね、出直します」


 取引相手はグスタフを愚弄したような、失望の眼差しで見て言った。そんな彼を悔しそうに見ながらグスタフは怒鳴る。


「低俗なものが私を見下すな! くそっ! あの出来損ないが資料を隠しさえしなかったら!」



 形だけは綺麗に掃除された客間を荒らしていると、また新たな問題がやって来た。


「ねえ、お父様! 今日着たいドレスが汚れているの! どうにかして!」


 問題を連れてきたのはエリザベスであった。彼女はいつものようなキレイなドレスでなく、衣装部屋の奥の方におかれてあったような汚い寝間着を来ていたため、グスタフは奇妙な顔をしている。


「エリザベス……なのか? なぜそのような醜悪なものを身にまとっているんだ? まるでミーアじゃあないか」


「ちょっとお父様! どうしてそんなこと言うの! それより大変なの!」


 グスタフはいつもうつくしいと言ってたはずのエリザベスの声に顔を歪ませていた。高くていい声と言ってた声は、グスタフにとっては単なる蚊であるようだ。


 二度あることは三度あるというべきなのか、またまた問題を抱えてある人物がやって来た。


「ね~ぇ。お父さん? わたくしのお財布がね、ちょーっと寂しいのよ。だからね!」


 やって来たのはミーナとエリザベスの母、ミリザリアだった。どうやらお金がないらしい。その理由は、ただ男を買いすぎてただけである。


「お父様ー! デートに行けないー!」


「お金を……」


 出来損ないの、実の親から「本当の娘でない」と言われていたミーナがいなくなっただけでこのざまだ。いらない娘がいなくなった、喜ばしいとホーエン家の誰もが思っていたが、違うようだ。のちにホーエン家は徐々に滅亡の途をたどることになる……


「私は高貴なホーエン家……こんなのは悪い夢だ……」


 グスタフはそう呟くが、そんな都合の良い夢はない。どの道、こんな家は近いうちに滅んでいただけで、ただ早くなっただけだ。




 





あとがき パトリックくんはホーエン家の失態を喜んでます。実はパトリックくんはホーエン家嫌いな人で、ミーアをちょっとだけ守っていました。今までミーアが死ななかったのは、パトリックくんのおかげでも……?




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