第5話 グロスター家のいじめ?

まえがき 嫌がらせを、嫌がらせと分かりつつ感謝する不幸系の主人公ちゃんです。



 ぐーきゅるるる


 自分のお腹の音で目覚めてしまった。どうしようかな? 自分の部屋すら分からないし、お腹もペコペコだ。自分の部屋がないのはあっちでも(ホーエン家)経験してるけど食料なしは困る。あっちでは残飯を一日一食で今日の分は貰えなかった。なんとか今日のご飯は欲しいなぁ……


「おいお前、自分の部屋も分からないくせにこの屋敷をうろつくな」


「え……」


 この図書室には自分以外にも私の結婚相手もいた。ま、まさかお腹の音も聞こえてた? ちょっとだけ恥ずかしい! 


 しかも何! この毛布! 掛けられてるんですけど!


「お前の部屋を紹介してやる。聞きたいこともある、ついてこい」


 そう言い彼は図書室から出ていった。あの様子からだとお腹の音は聞こえてないらしい。


 ……いや毛布どうするべきなの。置いてくべき? 彼のもの? 彼の名前も知らないし、疑問が頭から消えない!



「歩きながらで聞くぞ。なぜお前はあの図書室を清掃しやがってたんだ?」


 彼は私が図書室から出てくるなり、さっそうと歩き出す。こっちが先に質問したいわ!


 しかも、しやがってたって……やっちゃいけないことだったんだ。どうしよう。


「す、すみません。やっぱりやってはいけないことですよね。すみません」


「……はぁ。チッあれは俺の図書室だから別にいい」


 こっちから質問できる雰囲気じゃないぞこれは。すっごく怒ってる。でもあの図書室だけ、ホコリだらけだから気になっちゃうじゃない!


「(この女……どういうつもりだ? 同情を買わせるような服装、そして自分から掃除までもする。ホーエン家に甘やかされた一人娘が、こうも続けて妙な行動を取るなんて……)」





 何度か長い廊下を通ったり、階段を登って着いた先は屋根裏部屋だった。貴族の家というのは二階が主人の部屋、屋根裏が使用人の部屋とされている。つまり夫人としての扱いではない。でも……ありがたい!


さすがはグロスター家! 嫌いな人が相手でもちゃんと部屋を用意する。あの実の家族とは大違い!



「ここがお前の部屋になる。隣には侍女だったり、使用人がいるが……フン、仲良くしろ」


「はい! ありがとうございます。えっとー、婚約者様!」


「……アーデルハイト」


「あ、ありがとうございました! アーデルハイト様!」


 アーデルハイトは夕食などはまた連絡する、そう言い残し去っていった……いや私のお腹の音バレてるじゃん! 食事の心配はしなくて良いけど恥ずかしい! お腹を紛らわせるために、自分の部屋を確認してみよう!



「夫人の扱いじゃないけど、すっごくちゃんとした人間の部屋だ……鏡がある、椅子も机もある! 時計もあって、今まで使ったことのない櫛もある! ありがとうグロスター家!」


 あのなぜか本家と同じくらい力のある分家(ホーエン家)だけ滅亡して、グロスター家だけ生き残ればいいのに! たぶん私の一生はグロスター家だと人間的だろうし!


暇だし夕食の連絡とか来るまで部屋を捜索しようか! 手始めに鏡を見るか!


「こんなにまじまじと自分の顔を見るなんて久しぶり……」


 私の髪は薄汚れて黒かった。どうして真っ黒なのかしらね、私の髪は。ホーエン家の特徴である金髪、それを全く受け継いでない髪は嫌いだった。けれど今は、感謝だ。


 櫛を手に取り、自分の髪に入れてみた。ブチッブチッ、何本か黒い髪は抜け落ちてしまった。それは黒くて、きれいな、夜空が手に入ったみたいで痛みはなかった。


 私の顔は……


 コンコン ガチャ


「失礼します。お食事を持ってまいりました」



 鏡を眺めている最中だったが、夕食の時間。時計は19:00を誇らしく差していた。グロスター家は19:00に夕食、覚えておかないと。


淡い白髪の女性が持ってきた料理は想像より素晴らしかった。だけどそれは、今の私じゃ全ては受け付けられないということになる。


だって一日一食で残飯を食べてたから、胃が受け付けないって訴えてるのですもの!


「では失礼します」


 残すより手伝ってもらおうかしら! ちょうどいい人がそこにいるし!


「ちょっと待って。少し一緒にいましょう」


「食事内容は旦那様が決めなさったので文句……え?」


 言いかけた内容は貧相な食事は私のせいじゃないですよ、でしょうね。パンとスープ、サラダ。私にとってはこれでも食べきれない量だけど、グロスター家の者ならあまりにもひどい内容だと思う。ちゃんとしたご飯だけで嬉しいから私は怒らないよ!


「別にあなたに怒らないわよ。話し相手がほしいの! お名前は何ていうの?」


「え、っと。エメと申します」


「そっか……」


 ちょっとした話を終えて、ご飯は少なくて良いと伝えた。パンは硬かったし、スープで十分だったのでエメにあげた。


「では、失礼します」


「わざわざありがとう、エメ」


 エメは会釈をし、帰っていった。本当にホーエン家は最低だったなと思い返す。さっきみたいな良い感じのスープがたまに出てきたとおもいきや、麻痺剤が混ぜられて反応を楽しんでたとか。最悪だった。


ゆっくり食事するのが、こんなに安心できるなんて初めてね。



後書き

予定ではホーエン家の描写。さらに、アーデルハイトくんの考えも入れたいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る