第4話 簡素な結婚式
銀髪の婚約者くんの名前はア……なんとかくんです!
グロスター家の意向もあり、結婚式は今日行われるって! でも参列者は私とその婚約者という超少人数らしい。その状況から、ホーエン家とグロスター家の溝がどれほど深いか分かるわね。
「グロスター嬢。早速ですが化粧直しに入っていただきます。そのご格好ですとよろしくないので……」
老執事はそう言い、ある部屋へ案内してくれた。そこには1人の女性と大きな鏡と、きれいな衣装がたくさんあった。今まで見たことのないきれいな物ばかりだった!
「こんなにきれいで良いものを使わせてくれるの? ありがとう!」
「私たちを愚弄するために演技を練習してくださったのですか。そのみすぼらしい服までも用意して」
鏡の前にいた女性は独り言のようにボソッと呟いてた。たぶんグスタフ(おとうさん)が嫌がらせとして、お金をよく使い散財するとかグロスター家に伝えたのだろう。だからこうして、間違って伝えられている。ほんっとだいっ嫌い!
「アンナ……!」
「ああ、失礼な言い方をしてしまい申し訳ございません。新婦さま」
老執事に叱れられたアンナは面倒くさそうに謝罪をした。ま! 家族の一員になるんですし、このくらいは笑って許さないとね!
「とりあえず化粧直しをお願いね!」
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アンナに身を任せ、少し待つと……なんとそこには! 見たこともない美しい女性が立っていた。というくらいきれいな私がいた。
「アンナさん」
「出来が悪いなんて批判は受付ませ──
「ありがとう! すごくきれいに見える!」
さすがグロスター家。すべての人材がトップクラス、そして「出来が悪い」なんて謙遜もして私を立ててくれる。ホーエン家の長女として見ても、ホーエン家の完敗だわ……
「「???」」
なぜかアンナ達は不思議そうな顔をしている。私の所作が良くなかったのでしょうか。こればかりはこれから学ぶしかないから、許してほしい。
「こんなに良い衣装まで……式の準備はばっちし! ですね! これで会場へ行くんです?」
いつもの口調は堪えて敬語にする。すこし間は怪しいけど、グロスター家にはバレちゃうかな?
老執事は目をハッとして、私に向かって言う。
「はい……では向かいましょうか。アンナも頭を覚醒させなさい」
老執事さんはドアに手をかけ、会場へ私たちは歩いていった。
「貴族にお礼言われたなんて、初めて……どういうことなの?」
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それにしてもグロスター家の廊下すっごく綺麗ね。ホーエン家なんてホコリだらけだったのに……同じくらい実力があると言っても、こういうところで差がつくんだろうなぁ。
「着きました。ここが会場です」
結婚式の会場は秀麗で、まさしく貴族っぽい飾りが多かった! 本で見たようなシャンデリア? とか透き通ってるガラス? とかたくさんあった。
けれど、どう見ても人数は少ないように思えた。だってホーエン家の参列者は人っ子一人いない! 新婦の私しかいない! ふつう両親から一言……みたいなのあるんじゃないの!
いや、グロスター家もいないっぽい。新郎の彼しかいないじゃん! この家で行われてるんなら、誰かしら参加すると思うんだけど……
司祭と執事とメイドしかいない状況から、やっぱりグロスター、ホーエンの溝はとっても深いらしい。
盛大な音楽と共に、私と新郎は向き合う。
「あなた達は……えーと以下省略。愛を誓いますか」
「ああ」
「…はい」
いや雑! 私じゃなかったら、とんでもなく失礼でしょ! 出来損ないの私だから許してもいいけどさ!
こうして特に面白みもない結婚式は終わった。私にとってはこのくらいがちょうど良いかもね。参列者は足早に去っていったので、私もこの家を探検しようか!
まず目についたのは廊下。グロスター家は実家よりも大きく、華やかな代物だった。
その中で目を引いたのは、青い宝石。日差しを受け壁に模様を反射させるそれは、まるで乗り物の中から見た海だった。
青い宝石に連れられて着いた先は、図書室だった。アなんとかって名札も付いてるけど図書室だ。妙にホコリ被ってたけどいっぱいの本が並んでいる!
早速読もう! ……でも先に掃除をするべきかな? 怒られちゃうかもだけど、きれいな場所で本読みたいし……ま、どーせ嫌われ者ですし大丈夫か。そう考えつつ、広い図書室の奥にあるホウキを取ってきて掃除をしてみる。
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実家で養った、養わされた? 掃除技術を用いて掃除を終えた。
「ゴミ箱はどこなの? 申し訳ないけど部屋の隅に固めておいて良いかな、さきに本を読みたいし」
興味の湧く本を探してみることにした。
「そういえばあの、乗り物はなんだろう? 気になるけど、乗り物の歴史みたいな本もあるのかな」
なんとばっちし! それっぽい本『乗り物』を手に入れた! さっそく読もう!
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「ちっ、あの女の部屋を紹介してないじゃないか。ディミティリス(老執事)も見つからないし……この家で遭難されても困るし、探さないと……まったく虐めが上手く行かんじゃないか! 父さんに叱られるぞ、これは」
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「オレの図書室……ん? こんなに綺麗だったか? 誰も使わないから掃除しなくていいと侍女に伝えてあったが……」
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「……馬車の中で寝ておいて、まだ足りないというのか。この女は。しかも一丁前にも図書室を綺麗にしやがって、媚売りか?」
「ムニャムニャ ごめんなさい…」
「!? こいつ……ッチ。調子が狂うな……父さんから叱りを受けそうだが毛布でも持ってきてやろう……クソッ」
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