龍は人を食べないってさ

「龍なの?ドラゴン?」

食べないと聞いて 先程今までにないくらい後悔したというのに 立ち止まり

話をするあたり……


「ドラゴンとも呼ばれておるが

私は龍だ 人は食べぬ 安心せよ」


ほう 龍だと違うんだ


「お腹空いてるの?」

恐る恐る聞くと


「うむ 何も食べておらぬ」

龍が答える


「何食べるの?」

自転車を立てて サブバックを持ちながら

近くにいく


「特には食べれないのはないのだが

人間は食べぬぞ」

なぜか 人を食べないことを繰り返す


「パンしかないけど 食べる?」

バックから 家に帰ったら食べようと

学校の側のお気に入りのパン屋さんで買い込んでいた クロワッサンの袋入り


「パンとな 分からぬが 

いただけるのならありがたい」


そう返事が帰ってきたから


ガサゴソと袋を取り出し

パフんと袋を破いて

差し出す


「どうぞ」


差し出したのだ

手を パンを握って差し出したのだ!

届かぬ!


「娘よ……届かぬのだ…」

龍がしょんぼりとうなだれ小さく呟く


「届かぬって だって……怖いじゃん

カプって手を食べられるかもしれないし」

ドキドキしてるんですけど

これでも……



「では…これでどうだ?」

龍はチロチロと舌を出した


「ひえっ!」

妙に赤い しかも大きい…


しかし彼?が妥協して?舌をだしたんだから 私も覚悟を決めなきゃ


頑張って近くに…

よってよって……パンをのせる!


まだ そこにある……何故


「あの いま乗せたんだけど…」


龍に話すと 舌を戻した

少しの間があって


「うむ うまい!」


某剣士みたいな台詞だけども

本当か疑わしいので

「どんな味でした?」


「………」


分かってないんじゃない?


「すまん 食べた感じがしない…」


小さいからかなぁ

そりゃこの体に あの大きさのクロワッサンじゃ わからないだろうなぁ


「主食はどんなものを食べるの?」

思い切って聞いた


首を少し傾けて


「水晶とかなら 少しでも

満腹になるかな」


水晶!


「水晶かぁ あ!」

鞄の所に戻りながら

「ちょっと待ってて!」

確か お守りに付けてたはず!

高校の入学のときに

自転車に乗って通うから持っときなさいって お守りをお母さんが買ってくれて

鞄につけていた

そこには小さな水晶もついていた


荷台の鞄を外して お守りを外す


握りしめて 戻って

龍に見せると


「おぉ 間違いなく水晶!」

龍が喜んでいるようで 尻尾がパタパタ


「良かった~これで大丈夫だね」

ほっとして 水晶だけを外す


「だが 良いのか?」


「何が?」


「それは そなたのお守りとして

効力を発揮しておるが…

その 食料としていただくのは

少し気がひけるというか……」


「うーん 水晶が無くなったら

効力は無くなるの?」


「いや 半減かな?」


「そうなんだ でも 大丈夫だよ

また新しいお守りになるから」

一年近く守ってもらっているお守り

今年の初詣の時に買ってもらった

新年までは あと半年もない


「そうか 申し訳ない」

頭を下げて謝る龍


「じゃあ これどうぞ!」


また 舌が伸びてくる

その上にちょこんと 本当に小さい水晶を乗せる


今度は乗せた途端するりともとに戻り

しかも 龍の体が光りだした





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