東海帝王の小公子?なにそれ?おいしいの?

自転車を漕いですぐに 橋までたどり着き

渡った


先程の山の裾沿いには1本道が通っている

橋を渡りきって 直進 突き当りを左

こぎこぎしているうちに

がけ崩れに似ている現場にたどり着いた



「何これ……?」



自転車を立てて

近くに行くと 青碧の 蛇………


「だ!だ!だ!」


それ以上言えない……

言葉が出る前に 体が固まっている


「すぅ~ハァ~」

深呼吸を繰り返しながら

ようやく力が抜け……


「大蛇!」

それだけかい!



「これは……あなこんだ?

のまれる!あなこんだ!デカい!」


大声をあげると

あなこんだがじりっと動いた


蛇なんて 最近見かけなくなったけど

これは すごい!

スマホ!写真!

怖さなど 興味に比べたら カスだ


ガサゴソとスカートのポケットから

スマホをかざして写真をとった


確認してみると ぼんやりとしか

写っていない!手ブレかな?

もう一度チャレンジして

確認してみると やはりぼんやり


「なんでだろ?写らない」




「おま……え……」


え?


「誰かのみ込まれてるんですか?

大丈夫ですかー??」


声が聞こえたので スマホをなおして

話しながら前を見ると


あなこんだがこちらに鎌首???いや

顔を向けて話していたのだった


「ひゃーーーー!」


「ぎゃーーーー!」


お互いに叫んで


「「ん?」」


沈黙が続く



「ひゃーーーー!」


「ぎゃーーーー!」



あわてて 自転車に乗りペタルに足をかけて 

ふん!

ひとこぎ!



「むすめよ……」



弱々しい声が聞こえてきて


やはり人がいるかと恐る恐る

ブレーキをかけ地面に足をつき

上半身振り返る


見渡すが誰もいない様子

「今喋ったのは あなこんだ?」


「あなこんだとは……何か判らぬが

喋ったのは私だ」


先程とは違い 鎌首をあげる力もない様子



「あなた 蛇なんでしょ?

喋れるの?妖怪?」

そんな 現実離れした事を聞くと


「私は……ゴホッゴホッ…」

あなこんだが返事をしようとするが

どこか痛めているのか


「大丈夫?」

と 結局蛇の側に近づき 覗き込む


「でも なんだかちょっと違うわね

蛇って頭になんにもついてないのに

あなた 角があるのね

日本昔ばなしとかラーメンの丼の印刷の龍みたい」


「よくぞ気がついてくれた

私は 東海を治める龍の一族

東海帝王の小公子だ」


「トウカイテイオウ?

馬?」


「龍だって……」


「トウカイテイオウでしょ?

競馬のお馬さんよ」


「………人間の娘よ……」

そこまで話したら グウーーーと

音がした


「!」


私は一歩後ずさり


「食べるきね!」


そう言い放って 酷く…これ以上ないくらい後悔した


「食べられるんだ!

お父さんお母さん じいちゃんばぁちゃん 兄ちゃん 姉ちゃん るなちゃん………

さようなら………私が馬鹿だったよ…」



「いや だから 蛇じゃないから

龍だから 食べないよ」



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