02 ダーティ・デスク

 わたしたち四人は、中学校の廊下を歩いています。


「いやあ、昨日のカラオケ、本当に盛り上がりましたね!」

「そうだねえ、最高だったあ! また行きたいねえ」

「わかるっス! 超絶同意っスよ!」

「そんなにカラオケ行ってると、サズのお金がなくなるわよ……」

「気にしないでくださいよー、わたしお小遣い結構貰ってますから!」


 窓から差し込む朝の光を浴びながら、そうやって会話を交わします。すれ違う生徒と目が合いました。不思議そうにわたしたちのことを見つめていたから、きっと羨ましいんだろうなあと思いました。わたしたちの友情は、すっごく美しいから!


 やがてわたしたちは、教室に到着しました。三年B組のドアをがらっと開きます。

 クラスメイトたちの視線が、わたしたちに一気に集中しました。

 それを気にすることなく、わたしたちは会話を続けます。


「そういえば今日はね、体育の授業があるんですよ! マラソン大会近いし、めっちゃ走らされるかもです。嫌ですねー」

「あははっ、サズならきっと大丈夫だよ! ボクたちも応援しているから、そんなに焦らずにねえ」

「うう、ラビ優しい……大好きですよ……」


「オレは隣で一緒に走ってあげるっスよ、こういうの得意なので!」

「アタシは魔法を使って、水をキンキンに冷やしといてあげる。だから頑張ろ?」

「うわー、チアもステュも優しいです! 最高の友人に恵まれちゃいましたね、わたし!」


 楽しい会話を繰り広げていると、自分の机が姿を現しました。



『頭おかしい』『死ね』『キモい』『死ね』『消えろ』『学校来んな』『死ね!』――



 そんな文字が、机の上で踊っていました。


 黒色をしたその言葉たちを、わたしはぼんやりと見つめていました。変なことが書かれているなあ、と思いました。


「うわあ、また落書きされてる……! 流石のボクでも、怒っていいと思うんだよねえ!」

「あはは、大丈夫ですよ、ラビ! わたし、気にしてないですから!」

「オレさ、サズは優しすぎると思うんスよね。オレの力で、書いた奴の魂を刈り取ってやりましょうか?」

「いやチア、流石にそれはいいですよ! 特別な力をそんな風に使わないでくださいよ!」


「いーや、アタシの魔法で、全身氷漬けにしてやるのがいいわ」

「ステュも魔法を間違った方向で使いすぎですー! わたしは気にしてないんですって!」

「ボクは気にするの!」「オレは気にするんスよ!」「アタシは気になるもん!」


 三人に詰め寄られて、わたしは目を見張りました。

 それから思わず、笑ってしまいます。


「あははっ……もう、みんなたちこそ、優しすぎますよー! ほんと何というか、最高かよです!」


 わたしはそう言いながら、三人のことを纏めて抱きしめました。あったかい! みんなたちの体温は、本当にあったかくて、すごくすごく、大好きな温度なんです!


 大好き! 大好き! 大好き! 大好き! 大好き!


 ラビのことが大好き、チアのことが大好き、ステュのことが大好き!

 そう思える相手がいるってだけで、わたしはすっごく、幸せだと思うんです!


「あーもう、サズったら、抱きしめ癖があるよねえ」

「ほんとほんと! まあオレとしては、悪い気分じゃないんスけどね」

「チア、それは何というか、ちょっと問題発言じゃないかしら?」


 みんなたちのやり取りを聞きながら、わたしは暫くの間、幸福な心地に包まれていました。

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