イノセント・ガール・サズ
汐海有真(白木犀)
01 イン・カラオケ
「放課後に友達と来るカラオケほど、幸せなものはありません! そうは思いませんかー、みんなたち!」
ミラーボール機能によって、きらきら虹色の明かりが眩しいカラオケの個室の中。わたしは電源の入ったマイクに向かって、そうやって叫びました。
「思うよ、勿論! 運動を頑張った後のお水が美味しいように、学校が終わった後のカラオケは最高だよねえ!」
初めに同調してくれたのはラビ――ラビット・イン・フーデッド・コート。真っ白な毛並みと真っ赤な瞳が美しくて、ついつい見惚れちゃいます。ピンと立った耳から覗く桃色も、とってもキュートです! でもラビは、可愛いだけじゃありません。すらりとした身体をモノトーンの洋服が包み、その上から紺色のフーディーコートを羽織っていて、シンプルながらかっこいい出立ちなんです!
「わかってるじゃないですか、ラビ!」
「そりゃあ勿論! だってボクは、サズの一番の理解者だからねえ!」
わたしはマイクを持っていない左手で、がしっとラビと握手します。ラビの手はふわっふわで、繋いでいるだけで心まであったかくなれちゃいます!
「相変わらず二人は仲良しっスね。まあオレも、サズの意見には同意っスけど!」
カラオケ機器を弄りながら、チア――チアフル・グリム・リーパーが笑います。笑うと表現したはいいけれど、チアは狐面を付けているので、正直表情の変化はわかりません。腰まで伸びた黒髪と着ている真っ黒な衣服は、とってもスタイリッシュ。まさに死神って感じの見た目だけれど、とっても明るくて優しいんですよ!
「でしょでしょ、チア! さあさあ、なんか歌でも入れてうたっちゃってくださいよ!」
「ふっ、任せてくださいっス! 流行を抑えつつ、かつカラオケで盛り上がれるような、最高の一曲をチョイスしてみせますからね!」
「さっすがチアー!」
わたしは思いっきり笑顔になります。チアと話していると、すごく元気になれるんですよね! 死神に元気を貰っているなんて、改めて考えてみると何だか不思議です!
「全く、アンタたちは相変わらずうるさいんだから。ちょっとくらい静かにしなさいよね、もう」
そんな憎まれ口を叩きながらも笑顔を隠し切れていないのが、ステュ――ステューピッド・ウィッチ。ショートカットに切られた銀色の髪と、左右で濃さの違う青色の瞳が、異国情緒が漂っていて素敵なんです! 魔女のはずなのに、着ているのはTシャツとジーンズ。でもその飾らなさが、ステュっぽくて大好き! そんな感じの服装なのに紫色のとんがり帽子を被っているちぐはぐさも、大好き!
「ステュったらそんなこと言って、本当はわたしたちのこと大好きなんでしょ?」
「ハア!? いきなり何を言い出すのよ、サズったら!」
「どうなんですかー、折角の機会ですし答えてくださいよー!」
わたしからの質問に、ステュは頬を微かに赤く染めます。ラビが「ボクも気になるなあ、聞きたい聞きたい!」とはしゃぎ、チアも「うひょー、急に最高な展開が来たっスね!」と手を叩きます。ステュはテーブルにバンっと手を置いて、口を開きました。
「あーもう、アンタたちのことなんて、大好きに決まってんじゃない! 恥ずかしいから言わせないでよ!」
「「「ステュのデレが来たああああああああああああ!」」」
わたし、ラビ、チアは、三人できゃっきゃとハイタッチし合います。ステュはぷるぷると身体を震わせてから、ドアの方へ歩き出します。
「アタシ帰るから! 恥ずかしい!」
「おっと、そうはさせませんよステュ! まだ一曲もうたってないじゃないですか! 宴はこれからですよー!」
「そもそもサズは、何でお酒も飲んでないのにそんなに元気なの!」
「実はわたし――コーラで酔える体質なんです!」
「便利かよ!」
ステュの突っ込みに、わたしたちはどっと笑います。ステュまで結局吹き出して、部屋の中を楽しい笑い声が満たしました。
「よーし、曲入れたっスよ! オレの美声に酔いしれるがいいっス!」
「わあ、待ってました! 手拍子の準備はバッチリですかー、ラビ、ステュ?」
「勿論だよ! 任せて任せて!」
「アタシもまあ、手くらいは叩いてあげるわよ」
「とのことです! チア、いっけーですよ!」
「おっけいっス!」
曲の冒頭が流れ出します。わたしは笑顔になりながら、ふと部屋を見渡します。
ラビ、チア、ステュ――
そんな三人と一緒にいるだけで、わたしはどうしようもなく幸せで、最高の気分になれるんです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます