第46話 魔王①
地平線の向こうで大きな爆発が起きる。
魔力の波動が感じられるので、恐らくは清野の魔法だと思われる。
それでも絶望的なプレッシャーを与えている気配は全く弱まる気配がない。
大きな力がぶつかり合うのが感じられる。
その時、地平線から空に向かってどす黒い色の魔法が放たれる。
間違いなく魔王であると思われる。
「マスター。あと二十秒で着きます」
「分かった」
焦る気持ちを少し落ち着かせながら、前方からの攻撃に備える。
何度か深呼吸を繰り返すと、視界に小さな黒い物体が見え始めた。
あれは…………人? いや、違うな。頭に角が三つ生えていて、肌も紫色だ。絵にかいたような悪魔らしい姿だ。大きな翼も爪も尻尾も何もかもが普通の魔物や人間とはまるで違う雰囲気を醸し出している。
「凪咲。とにかく攻撃に当たらないように気を付けてくれ」
「分かった! 無理して前に出ないようにするよ」
魔王が近くで視認できるようになって、それと戦っているメンバーがやはり清野たちだった。
意外というか、試練ノ塔での自分勝手な姿は全く見えずに、全員が協力して連携をする姿が見える。
魔王は宙に浮いたまま動く事なく、手から黒い玉や爆炎を放っている。まるで彼らと遊んでいるように無邪気な笑みを浮かべていた。
黒い玉が後衛のメンバーに当たる直前、一人の男が現れて黒い玉を蹴り飛ばした。
「木山先生! ごめんなさい!」
「いいんだ。まだまだ戦いは続く! みんな気を抜かないように!」
「「「はいっ!」」」
パーティーは木山先生が先導しているんだな。それぞれがいつでも援護に行ける距離を取っているのを見ると、木山先生の手腕がいかに素晴らしかったのかが伺える。
ただ、状況が状況だけにそれに感心ばかりしている場合じゃない!
超高速で移動してテンペストがドリフトをしながら、俺の体を上空高く飛ばしてくれる。
「木山先生! 俺も参戦します!」
「蒼空くん! 心強いよ! 特別クラスはこれから蒼空くんの援護するように!」
「「「はいっ!」」」
遊んでいるようににやけている魔王に真っすぐ飛ばされたおかげで魔王が捕捉できた。
魔王はまだまだ遊んでいるようで、俺を見つけても動じることなく、こちらに人差し指を指す。指先に黒いエネルギーが集まり始める。
恐らく遠くから見えた黒い玉なのだろう。
案の定、魔王から黒い玉が発射された。
このまま直撃すると痛いのは間違いなさそうだな。
「――――展開、『大盾』」
守護神を倒す前の俺のレベルは三十だ。レベルが上がるにつれ強くなれるのだが、特に五の倍数の時は新しいスキルを獲得する。
レベル三十五で獲得するスキルは、スキル『大盾』の持続時間が九十秒から二百七十秒に上昇した。それによって長く使えるだけでなく、持続時間が終わっても再使用までの時間もぐっと減った。
黒い玉が大盾にぶつかると、ただの水玉のように周囲に弾け飛んだ。
一瞬だったが、魔王が少し驚いた表情をする。だが既に遅い。
レベル四十で獲得したスキル『シールドフリング』は大盾を前方に投げつけるスキルで、『シールドバッシュ』が横凪ぎなのに対して、こちらのスキルは遠くまで投げ飛ばすことができる。
その速度は意外にも早くて、俺の前から放たれた大盾が真っすぐ魔王に直撃した。
俺のスキルが魔王に通用するのは、それとも通用しないのかが気になるところだった――――――が、どうやら心配しなくても良いようだ。
俺の大盾が当たった魔王は他の魔物同様強制的にその場から吹き飛んだ。
その隙を既に予測していたのか、木山先生が後ろに回っており、両手に大きな雷を纏って飛んできた魔王をそのまま叩き下した。
木山先生によって魔王が真っすぐ地面に叩き落とされる。
大きな爆音を響かせて地面に叩きつけられた魔王は、紫色の吐血を見せた。
その瞳は驚きから怒りに変わり始めた。
魔王自体も知能があるの伝わってくるけど、どこか
「エアフロート!」
後ろから声が聞こえて来て、俺の体が緑色に包まれた。
「清野!?」
「…………久しぶりだな。水落。浮遊魔法だ。操作は認識するだけで自由に空を飛べるようになる」
「そうか。ありがとう」
「…………戦いが終わったら話したいことがある」
「分かった。楽しみにしている」
「ああ。死ぬなよ」
「ふっ。相変わらず
認識を魔王に向ける。一気に空を翔け、真っすぐ魔王に突撃した。
魔王は俺を見つけて怒りの表情に染まって、その場で叫ぶ。周囲の地面に一気に亀裂が走り、空気が唸る。
それでも大盾を前にかざしたまま魔王に突撃する。
全ての事象を無効化できるので大盾を前に張っているだけで魔王の攻撃も全て無効化していく。
地面にいた魔法に真っすぐ突っ込むと、さすがの魔王も大きく後ろに飛んで避けた。
だが、それも
「ナイスアシストだ。蒼空くん! ――――――雷神インパクト!」
木山先生の白い電撃が魔王に落とされた。
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