第44話 希望

 テンペストに乗り込んでその機を待つ。


 窓の外には姿がしっかり捉えられるくらい近づいて来た魔物の群れが見える。


 それと同時に、都からの攻撃が始まった。


 既に外のエリアの建物は魔物によって踏みにじられて瓦礫がれきと化していく。


 元々壊れる前提の建物だけど、ここ最近は守護者の頑張りのおかげで長持ちしていたのを考えると少し寂しく思う。


 特にうちの場合、七海と一緒に長年暮らした実家は、これからも離れたくない家だった。


 ここからは見えないが、恐らくうちも踏みにじられていると思われる。


 外からの攻撃が始まる大きな音が聞こえてくるようになった。


 魔物の群れに大きな爆発が起きて吹き飛んでいく。


 恐らくはこちらの砲撃の類だろう。


 弱い魔物なら銃火器の方が効きやすかったりするからな。


「あの遠くの巨大な魔物が魔王かな?」


「いや、あれからはそれ程強さは感じないな」


「この前の守護神とは違うのかな。でもこのまま放置していいの?」


「いや、良くはないと思うけどな…………月守家で何か対策を考えてくれているといいけど」


 その時、空を一台のヘリコプターが飛んでいく。


 目にも見える不思議なバリアを纏っていて、空を飛んでも撃墜されないようになっている。


「…………!? ま、まさか!」


 ヘリコプターから感じられる気配には凄い覚えがあった。


「どうしたの?」


「まさか…………あのヘリコプターに乗っているのは…………」


 俺達は窓から見える戦いを眺めた。




 ◆魔物の群れの上空◆




「みんな。覚悟はできているな?」


「任せてください。先生・・


 答えを聞いた男は笑みを浮かべる。


 彼らをここまで連れてこれるようにするのは大変なことだった。


 元々はそういう性格ではなかったのに、あの試練とやらに行って帰って来た彼らはあまりにも性格が豹変していたのだ。


「さて、初撃は任せるぞ? ――――――清野くん」


 木山が見つめた先には一人静かに瞑想をしている清野がいた。


 ゆっくりと目を開けた清野は真っすぐ木山を見つめる。


「任せてください。先生。俺は――――――もう迷わない」


「良い目だ。では行こうか。最強天能の第斑」


「「「「了解!」」」」


 ヘリコプターは大型亀魔物の上に滞空する。


 蒼空たちが戦った守護神の大型亀魔物とは違うが、大型というだけでも厄介な敵であるのは違いない。


 ヘリコプターの扉が開くの中に強烈な風圧が入って来るが、誰一人に風圧を感じないのかゆっくりと開いた扉に並ぶ。


「最初は俺が出る!」


 真っ先に身を投じて飛び出したのは――――清野である。


 自由落下を続けていた清野は背中に付いている機械に触れる。


 背中から不思議な光の翼が現れると、自由に飛べるかのように空を飛び始めた。


 大型亀魔物の頭部の前に滞空する清野の両手には凄まじい魔力が込められた魔力玉が浮かんでいた。


「――――――二重詠唱! ヘルフレイム!!」


 両手から放たれた魔力玉は炎に変わっていき、大型亀魔物に直撃すると周囲を巻き込む強烈な爆発を起こす。


 それでも倒しきれない大型亀魔物だったが、ヘリコプターから飛び出した他のメンバーによって次々攻撃が始まる。


 最強天能として、魔法の最高峰の力を持つ清野。


 だが、他のメンバーも蒼空や清野同様に最強天能を授かっている。


 最強剣術、最強槍術、最強武術、最強弓術、最強操銃。


 五人の攻撃が同時に炸裂して大型亀魔物がその場で絶命した。


「これから魔物の殲滅に移る! まだ魔王が現れていないから、常に魔王を意識して動いてくれ!」


「「「了解!」」」


 すっかりリーダーらしく・・・なった清野の指示によって最強天能たちが展開を始める。


 押されそうになっていた人類に大きな光となり始めていた。




 そして、時を同じくして、都を囲う多くの魔物の群れにも裁きの光が舞い降りる。


 最強天能ではないけれど、現状最強戦力を誇る七人による全開の攻撃。


 最強という言葉は、ただ一番強いから与えられる意味ではない。


 彼らが最強である所以。


 その一番の理由は、こと戦闘において右にでる者がいない、いや、誰であっても殲滅する力を持つからこそ、人類の最強である。


 彼らが攻撃一振りで魔物の群れが大きく数を減らしていく。


 絶望に染まっていた守護者達の中に希望の光が広がり始めた。

















 それ・・が現れるまでは。

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