第35話 二丁の銀牙
魔物エリアでは無数の魔物と戦う事になるので、普通のレベル上げの方法としては、境界線のこちら側でパーティーを待たせて、
通常時なら魔物が境界線を越えて侵攻するなんてあまりない。
ただやはり例外はあり、その代表的な例は強い魔物が魔物を連れて侵攻してくる場合が多い。
以前現れた魔王は大量の魔物を連れて侵攻していたと聞くし、そうでなくてもAランクやBランクの魔物も部下のように大量の魔物を連れて侵攻してくる場合がある。
「にぃ! 先制攻撃は私からね!」
「ああ。任せた」
得意げな顔で妹が取り出したのは――――銀色をベースに、イーグルの模様が描かれている大き目な片手銃を二丁を両手にそれぞれを持った。
妹にしては大き目な銃なので、カッコいいというよりは銃に使われてるようにも見えるが、それでも七海のドヤ顔と光を受けた銀色の銃身が美しい。
「ナギ姉から借りた二丁銃、
「七海。中に銃弾が入っているのか?」
「これは銃弾入れる方式の銃じゃなくて、自分の魔力を注いで撃つ銃だよ~」
「へぇー珍しい物な気がするのだが……良かったのか? 凪咲」
妹が持つ二丁の銃は間違いなく高額、いや、額を通り越して国内でも珍しい品だろう。
そんな大事なモノを妹にさらっと貸していいのかと心配になる。
「問題ないわ。私が持っていてもただ腐らせるだけだし。私が報酬としてもらったものだけど、使えないから、本当の持ち主に出会った感じ? それに七海ちゃん可愛いから、銃を構えると凄く可愛いと思うの」
「そ、そうか……俺も可愛いには賛同だな。七海に貸してくれてありがとうな」
「ふふっ。蒼空くんに感謝されたら、もっと貸した甲斐があったものね」
「二人とも~? 七海ちゃんの初陣ですよ? ちゃんと見守ってあげましょう」
「そうだったな。七海! 好きなだけ暴れていいぞ!」
「あいっ~!」
少し肩を落としていた妹が再度復活してドヤ顔で二丁銃に魔力を込め始めた。
銀色の二丁銃から美しい白色の光が溢れて、凄まじい力を感じる。
そして――――
「『
妹が二丁銃の引き金を引いた瞬間、目で追う事ができない凄まじい速度の魔法の弾丸二発が飛んでいく。
一瞬にしてこちらに向かって来ていた魔物が無数に吹き飛びながら、空気が割れるような轟音が鳴り響く。
たった一発で目の前の魔物だけでなく、遠くに見える森すら大半破壊していた。
「えっへん! これは七海の実力だぞ~!」
今日の妹は絶好調だな。
それにしてもたった一回の攻撃でこれだけの威力を出せるなんて、妹が持つ天能がSランク天能である事を証明するかのようだ。
「七海ちゃん凄い~!」
「本当に凄いですわね! これなら魔王も簡単に倒せそうです!」
彩姫が言う通り、七海一人で全部倒せそうな気もするな。
「じゃあ、どんどん行くよ~!」
またもや七海が引き金を引くと、前方にまたもや大きな衝撃波により土が綺麗に削れていく。それと共に魔物がどんどん姿を消していった。
「…………意外とやる事がないわね」
「七海が強すぎるからな……ただ制限とかないのか?」
「あるわよ。あの銃はね。魔法の弾丸を生成するから銃を持つ者の魔力量に大きく左右されるんだけど、放った時の強弱もかなり左右されるの。最低限度で放って、それを加速させて最高威力に引き上げている七海ちゃんならではの使い方かな。それでも魔力はかなり重いと思うわ」
魔法の弾丸は一見楽な武器にみえるけど、それほど都合の良い話はない。
そもそもそこまで便利な武器ならば、銃を使っていない凪咲の手に渡るはずもない。
四回目の銃撃を終えた妹が銃を仕舞い込んだ。
もちろん、前方からこちらに向かって来ていた魔物は全滅している。
しかし、理由はそれじゃないのは明白だ。
妹の顔から凄まじい量の汗が流れていたからだ。
「七海。大丈夫か?」
「大丈夫! 八発が限界かな……それに二丁同時に込めないとダメだから、四回が限界かも」
「そうか。でも自分の限界を知っておくのは大事だし、七海の戦力がかなり大きいから、これからの戦いではよく考えて使おう」
「は~い!」
「七海ちゃん。どうぞ」
彩姫が七海に水を渡す。
こういう心遣いができる彩姫は、お嬢様とは思えない程に優しいと思う。
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