第32話 月守家の支援
元々四人家族のための家だから、実は部屋がまだ残っている。
父さん達はゆくゆく俺達が大きくなったら別々の部屋を持てるようにと考えていたようで、俺の部屋、妹の部屋、両親の部屋、両親の趣味の部屋などがある。
趣味の部屋に集まっていた多くのプラモデルは、未だ妹の手によって綺麗に管理されていたりする。
両親が泊まっていた部屋でまさか妹と凪咲と彩姫さんが一緒に暮らす事となった。
元々部屋が広いので問題ないと思うんだが、そこまでするかと思ったら本当にそこまでして驚いた。
ベッドとかは彩姫さんが大きなベッドを持ってきてくれたおかげで寝る時は問題ないらしい。
意外にも妹は楽しそうにしている。
昔は四人で暮らしていたから、あの時の事を思い出しているのだろう。
「蒼空様」
「彩姫さん。様だなんて、普通に呼んでくれていいですよ」
荷物の運びが終わり、リビングに集まると彩姫さんが声をかけてきた。
「ふふっ。それでしたら、蒼空様も私の事、呼び捨てにしてください!」
「えええ!?」
「お二人は呼び捨てなのに、彩姫だけ呼び捨てじゃないのは不公平です!」
いや……どういう公平だよ……。
「これから仲間になるんだし、いいんじゃない?」
「そうか? まぁ七海がそこまで言うなら――――――彩姫」
「ふふっ。私が呼び捨てにされる日が来ようとは……なんて素晴らしい…………うふふ」
せっかくの美少女が台無しに思えるくらい、暗黒色に染まった笑みを浮かべる。
「ごほん。その手紙は?」
彩姫が渡そうとした手紙がテーブルの上に置かれたままだ。
「そうでした。こちらの手紙というか招待状ですね。お父様からの
「支援か…………」
「もちろん金額的な支援ではありません。蒼空くんがそういう類の支援を嫌っているのも知っているので…………どちらかというと、これから
「分かった。開いてみるよ」
受け取った手紙を開くと、一枚の高級な紙が入っており、中には『全自動二輪車の正体』と書かれていた。
「全自動二輪車?」
「それは良い考えね!」
意外に反応するのは凪咲の方だ。
「全自動二輪車は、能力者達が現場に急いで駆けつけるために開発された二輪車で、特殊な力で作られた二輪車はまるで生きているかのように全てを自動で運転してくれるって聞いた事があるよ! まだ開発段階だと聞いていたけれど……」
「実はその開発がここ最近ひと段落したようです。危険は全くないのが検証されたので、一番最初の持ち主を蒼空くん達にしたいとお父様は考えたみたいです」
「なるほど……確かに現場まで駆けつけるのに時間がかかるのがネックだったからな。凪咲の言う通りなら便利そうだし、彩姫がそこまで言い切るなら安全だと思うから、ぜひとも受けようか」
「「賛成~!」」
七海もワクワクした表情を浮かべて賛同してくれた。
俺達はその足で招待状の裏に書かれていた場所に向かった。
都心部の外れにものすごく大きな建物があり、倉庫というよりは巨大なビルのように見える。
中に入ると天井がどこまでも続いている作りになっていて、内側にいくつもの階が続いているのが見える。
「お待ちしておりました。蒼空様でございますね」
燕尾服を来た白い髭が目立つ男性が優雅な挨拶で出迎えてくれた。
「初めまして。蒼空です」
妹達も紹介すると案内すると奥の方に進む。
歩くとどれくらいかかるか想像もできないくらい広い建物を、不思議な円盤に乗って進む。
燕尾服の男性は
小野寺さんに案内されて奥にある広い工場の中に入っていく。
そこには大型二輪車がずらりと並んでいた。
「ここは天能を持つ皆さんがより魔物と戦いやすくするための開発を続けております。まだ試作段階ではありますが、大型魔物を受け止める巨大機械なども開発を進めております。その際に生まれたのが全自動二輪車システムでございます」
見た目は通常大型二輪車と見分けがつかない。
そもそも車両を持つには年齢と資格を取らなくてはならないのだが、俺達が乗っても問題ないのだろうか?
「こちらの二輪車は特殊な技術によって作られていて、一台一台に全て成長するAIを搭載しております。通常大型二輪車の場合、操縦者が必要なため色んなしがらみが生まれますが、こちらの全自動二輪車は操縦者が必要なく、操縦を
「操縦できない!?」
「はい。姿形は大型二輪車に似せる事で乗りやすくしていますが、こちらについているハンドルなどは外から動かす事ができません。全て全自動でしか動かす事ができないので気を付けてください」
なるほど……だから俺達のような学生でも乗れるという事か。
どちらかと言うとタクシーとかそういう類のモノだな。
「ただし、座ればいいだけとはいえ、乗った事がない大型二輪車に乗るのは難しいでしょう。こちらで少し訓練を受けて頂き、試乗して頂きますので」
小野寺さんの指示通りに俺達は短い訓練を受ける事になった。
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