第10話 今と妹
※昨日投稿ミスで9話を前倒しで投稿してしまい、8話が飛んでしまいました。大変失礼しました…8話は凄く大事な話なので、もし読んでない方はぜひ読んでください!※
次の日。
どうしても同じベッドで寝ると聞かなかった妹より先に目が覚めた。
俺の身体に必死にしがみついているのが、ここ数か月の妹の辛さが理解できる。
暫くして目が覚めた妹は半径3メートル以上離れないようにと命令を下し、まさかトイレの近くにすら待機するように言われた。
ここまで心配かけてしまったんだから、逆らう事はせず、素直に命令を聞くことにする。
それにしても数か月前より…………妹のが大きくなった気がするのだが。
妹が用意してくれる朝食を食べて、家に用意していた制服に着替える。
「…………ん? 七海?」
「うん?」
「その制服は何?」
「え? 何って、学校の制服でしょう?」
「それは知ってるけどさ……」
そもそも七海は俺の一つ下。
今は中学生のはずなのに、来ている制服は――――――俺と同じ高校の女子用制服だ。
「なぜうちの制服を?」
「え? にぃ!?」
何故か俺のおでこに手を当てる。
いや、この身体は風邪なんて引かないから。
「ごめん。七海がどうしてうちの制服を着ているのかが分からないんだ」
「…………にぃ、向こうに行ってどれくらい経ったか覚えている?」
「そりゃ――――三か月だね」
「…………」
そんな俺に右手の人差し指を立てて見せる。
そして、
「一年経過しているよ?」
七海の一年という言葉が木霊していく。
「えっ?」
「にぃが試練ノ塔に入ってから一年が経ったの。私もにぃの学校に入学して
「はあ!?」
小さく溜息を吐いた妹は、近くの時計を持って来た。
そして、そこには女神歴501年4月という表記になっている。
それはおかしい。
間違いなく試練ノ塔に入って三か月経っている。
つまり、今は7月になっていなければおかしい事になる。
さらにいうなら――――俺が入学した女神歴は500年だ。
世界に魔物が溢れ土地がエリア化となり、人類が生きられる土地がぐっと狭まった日から女神歴と呼ぶようになった。
女神歴500年に天能を授かった俺は、日本でも6人しかいない特別な天能を授かった一人だ。間違いがあるはずない。
「にぃ?」
「…………間違いなく、あそこに入って俺は三か月過ごしたはずだ…………あ! 七海!」
「う、うん?」
「あいつら――――あいつらはいつ帰って来たんだ?」
「あいつら?」
「ほら、清野達だよ。俺と一緒に塔に入った5人」
「えっと……多分まだ帰って来てないはずだよ?」
「はあ!?」
いやいや、俺よりも先に帰っているはず。
一体何が起きている……?
まず、今を整理すると、間違いなく試練ノ塔に入って半年は経過していない。なのに外では丁度一年が経過している。
俺よりも先に帰ったはずの清野達も帰って来ていないらしい。
妹が話していた状況から政府はどうやら俺を死んだと判断したらしい。試練ノ塔に入った直後、玄関口で辛うじて言葉だけ通じている時、一年以内に攻略しなかったら死亡と判断してしまうと話していたのを覚えている。
まだ一年が経ったわけではないが、恐らく死亡判定にするつもりで進めていたのだろうな。
「分かった。ひとまず、学校に向かおう。政府の人もいるだろうから」
「う、うん。にぃ、疲れてない?」
「大丈夫だ。七海に会ったら全て吹っ飛んだから」
「えへへ~じゃあ、今日は馬鹿政府に文句を言いに行こう~!」
「そ、そうだな。お手柔らかにな」
「ふん! 絶対に許さないんだから!」
怒った表情の妹も可愛い。
家を後にして慣れた道を進んで東京結界内に入っていく。
駅は二つに分かれていて、認証なし且つタダで乗れる結界を円状に回る列車。
そして、もう一つは東京内に繋がっている長い廊下があり、ここは認証がなければ自由には入れない。
というのも東京内に住んでいる人すら認証なしではここを通れない。
その理由は――――真っすぐとある学校に通じる専用列車に乗れる駅に繋がっているからだ。
普通の列車よりも小さいが、その分高性能で東京中心部まで一瞬で行ける超高速列車は、
それにしてもうちの学校に入学したという事は七海も…………。
列車の椅子に座り込むと数分で出発時間となり、一気に駆け出した。
乗っている間は動いている感覚がないが、外の景色はとんでもない速度で通り過ぎていく。
「七海」
「うん?」
「七海はどういう天能を授かったんだ?」
「あ~そういえば、話してなかったね~。――――――Sランク判定の天能『
「…………」
うむ。熱はないな。
「本当だもん! まだ上手く力は使えないけど、鑑定ではSランクなんだって」
「そ、そうか……名前を聞く感じ、凄く強そうだな」
「でも重いモノは飛ばせないし、まだまだ制限はあるから練習している最中なんですぅ~!」
「そっか。七海も強い天能に目覚めてしまったか……」
できれば…………目覚めて欲しく
その時、俺の右手に柔らかい感触が伝わる。
妹の俺の右腕を抱きしめた。
「大丈夫。私もにぃを守れるように強くなるから」
あぁ…………それが一番
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