第6話 無能のレベル上げ

 ――【経験値一定値達成により、レベルが7から10に上昇しました。】


 ――【天能『絶対防壁』により、スキル『威嚇咆哮』を獲得しました。】



 熊も中々の経験値量で、一気にレベルが10に上昇した。


 威嚇咆哮は前方に咆哮を放ち、敵と判定した者のステータスを9割を減らす効果を持つ。


 ただし、最上級魔物――――Sランク魔物以上には効かないので、ボスには効かない。


 それでも普通にレベルアップを考えれば十分だし、試練ノ塔にはボスは残っていないはず。


 近くに少し足が速い大型狐魔物がいるはずだ。


 ブラックドラゴンの牙を回収して、近くの狐魔物に向かう。


 先手として牙を投げ込んで狐をこちらに誘う。


 やってきた狐威嚇咆哮を使ってみると動きが目に見えて遅くなった。


 体当たりをするより、普通に攻撃を避ける練習を試してみる。


 当たっても傷はないが痛みはある。


 だから避ける練習はしておきたい。


 9割ステータスが減った狐魔物の動きを見極めながらブラックドラゴンの牙で引っ掻く。


 狐魔物の攻撃は意外に遅く、避けるのはそう難しくなかった。


 何度か避けては斬ってを繰り返すと、アナウンスが聞こえて狐魔物が倒れた。


 狐魔物は意外にもお肉が美味しいので、そのまま火を起こして肉を食べる。


 餓死はしないけど、空腹が続いてしまうとさすがに辛い。


 痛みは我慢して治せるけど、空腹だけはずっと感じ続けるから、痛みより空腹を満たすのが重要だったりする。


 それから俺は同じ方法でいくつかの魔物を倒した。


 レベルの事は清野達からあらがた横耳で聞いているのだが、レベル5の倍数になればなるほど、必要経験値が爆増すると聞いている。


 例えば、レベルが1桁だと一体で3ずつ上がってたのが、10になっただけで一体倒しても1しか上がらず、レベル15になるためには5体の魔物を倒す必要があった。



 ――【経験値一定値達成により、レベルが14から15に上昇しました。】


 ――【天能『絶対防壁』により、スキル『大盾』を獲得しました。】



 今度は『大盾』という新しいスキルを獲得した。


 このスキルは前にバリアのような盾を張る。それには絶対防御効果があり、貫通とノックバックを無効化させる効果がある。


 つまり、俺が大盾を発動さえしてしまえば、どんな攻撃さえも防げて、後ろを守る事ができる。


 それでいて、味方の攻撃は通すという優れものだが、今の俺には無用のモノだ。


 効果時間は90秒展開できて、解除してから再発動まで300秒掛かるので、使う場面は見極めなければならない。


 念のため、発動してどれだけ動けるのか確認するために大盾を発動させて動き回ってみる。


 手に持つのかなと思ったら、まさかの自分の胸に設定がされているようで、胸から50センチ前に展開されて、俺が動いている速度と同じく動いていた。


 壁とか床とかにぶつからないのかなと思ったら、そういう物質は貫通・・するようだ。


 検証も終わったところで、また狩りを続ける。


 今度は2体を倒してもレベルが上がらなくなり、何体かの魔物を倒しては隠れて眠る事にした。




 ◆




 自然と体が起きて、周囲を見回す。


 試練ノ塔内だと時間が分からず、夜もないので眠るのも最低限しか眠らない。


 そもそも天能のおかげで眠らなくても身体能力が下がる事はない。ただ精神的なモノを補うために眠っているだけだ。


 さて、今度はレベル20を目指してまた狩りを続けよう。


 再復活している熊や狐を倒していく。


 レベル15からはレベルを上げるのに魔物を3体倒す必要があって、何とか15体を倒した時に、レベル20に到達した。



 ――【経験値一定値達成により、レベルが19から20に上昇しました。】


 ――【天能『絶対防壁』により、スキル『苦痛弱軽減』を獲得しました。】



「苦痛弱軽減!?」


 思わず声に出してしまうくらいに、その名前に驚いてしまった。


 今まで手に入れたスキルは『麻痺』を除いては全てアクティブ型スキルと言われているスキルで、発動させるスキルである。


 レベル5で手に入れた『麻痺』は、パッシブ型スキルと言われる持っているだけで発動するスキルだ。


 そして、今回手に入れたのはパッシブ型スキルの『苦痛弱軽減』。


 内容としては受けた苦痛を軽減してくれる優れもののスキルだ。


 何より……今まで受けていた痛みが軽減されるというなら、本当に嬉しい。


 早速スキルの効果を試すために、虎魔物のところにやってきた。


 初めて虎魔物を倒した時、左腕をわざと噛ませて攻撃した。


 あの時の激痛は今でも覚えている。


 だからこそ、今一度同じ方法で倒すことにする。


 虎魔物の小石を投げてこちらに走らせる。


 飛び上がった虎の口に左腕を嚙ませる。


 ――――痛い。


 痛い事に変わりはない。


 でも、以前感じていた痛みから比べるとずっと弱い・・


 一つ試してみたい事があり、左腕を噛まれたまま『体当たり』を発動させてみる。


 左腕を噛んでいるのだから、虎ごと移動すると思いきや、敵判定になっているからか左腕が口の中を進み、数センチで虎に当たり後方に吹き飛んだ。


 以前なら試したいとは思わなかったけど、『苦痛弱軽減』のおかげで、もしも噛まれた場合でも体当たりを武器として考えるのはありかも知れない。


 レベル15からはまた必要な経験値が上がり、1上がるのに5体ずつ必要だった。


 そして、レベル20から1上げるのに7体、25からは10体もの数が必要だった。

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