第2話 感謝
目を覚ますと、僕は町の門からは見えないほどの木の裏に転がされていた。 着ていた服に土が付き少し薄汚れた印象を受ける見た目になってる。
僕が最初に考えていたのは父に対する恐怖だった。甘やかされ育ってきた僕には、耐え難い恐怖を受けた僕は近くの木を背にして座り込んでどう謝ればいいのか、どんな事をしたら許してくれるのかを必死に考えていた。追放された僕に帰る手段なんてものは、すでに断たれているのを頭が理解するのにはかなりの時間がかかった。
もうどうすることもできないとわかってからはさらに悩んでしまった。12歳でスキルを得てすぐのまだまだ子供の僕には一人で生きる方法というのが分からなかった。僕はいくら悩んでも仕方ないと思い、少し遠くに見える街の門にわずかの希望を持って歩いていた。
父は隣町と言っていたが僕には見たことがない大きい街の門が立っており、端には門番も立っているほどの大きな街だった。元の家がどこにあるのか、今どこにいるのかも一切検討のつかない事にまた悩みそうになったが、門番に声をかけられそっちに意識が向く。
「君! 子供一人で外を歩いていたら危ないよ! そんな防具でもない普通?の服を着て外に出るなんて自殺行為だよ! 外は魔物が出て危ないんだ! 早く中に戻ってきなさい!」
門番にそう言われるが、僕が中に入った所で何もできない僕には行く当てがなかった。 悲しい顔をしていたのか、または絶望した顔かわからないが門番がすぐに駆け付け話しかけてくる。
「君が今一人で外を歩いている事に何か理由があるのかい? お兄さんに教えてみてごらん?」
行く当ても頼る相手もいない僕はこの門番さんの優しい言葉を聞いて泣いてしまった。さすがにこんな状態の子供を放ってはおけないと思ったのか門番さんに連れられて休憩所に案内された。真ん中の大きな机を挟み椅子に座るよう言われ座ると質問を受けていた。
名前 〇〇〇〇〇・ルーグ
出身 フェムラウ
歳 12歳
名前を答えようとすると胸が苦しくなり家名は名乗れなかった。そんな僕を見ていた門番さんは一瞬気にする素振りを見せるも質問を続けた。身元が分かる程度の質問をした門番さんは、僕が外に一人で居た経緯を聞いてきた。スキルを見た父が怒って家を追い出させ呪いを受けたと正直に話すと門番は驚いて表情を険しくする。
「その話が本当なら君の親は相当クズだな、そして何も持たせず遠くに捨て去ったと・・・ 君が今どうするべきかは私にもわからないが行く当てがないと言うのであれば、この町の孤児院に相談して君を引き取ってもらうよう話を付けようか?」
孤児院の話を受けた時僕は即座に頭を下げてお願いしていた。行く当てのない僕にはすごく助かる話だ、すぐに孤児院の方に話を付けに門番さんが向かってくれていた。僕はこの門番さんに感謝をしたかったが今はそんな余裕は持てていない。いつかこの大きな恩を返したいと心に秘めた。
それからしばらく時間が経った後、門番さんが戻ってきて道案内をしてくれた。
門番さんに案内され目的の孤児院へ案内された僕を迎えてくれたのは小さな孤児院の院長さんである女性でした。
「いらっしゃい門番さんとルーグ君ね? 今日からこの孤児院で預かる事になるのは聞いているのかな? こんな小さな孤児院だけれど楽しく過ごしてもらえると私はうれしいです。私は孤児院の院長をしています。名前はマリーです。みんなからはマリー先生と呼ばれているからルーグ君も是非そう呼んでもらえると嬉しいわ」
門番さんは安心したように息を吐くと、僕の事を頼んだとマリー先生に伝えるとササっと元の仕事へ戻っていった。その門番さんを優しそうな柔らかい笑顔で手を振り、見送ったマリー先生は、次に僕の方に向き直り中の案内をしてくれた。
小さな孤児院は特にこれといった名前が無く、小さな庭に小スペースの畑、神様の像を飾った小さな部屋とみんなが食べるであろう少し大きな机、両端に2段ベッドが2つずつ並んだ寝室がありその隣にマリー先生が寝る寝室があった。寝る場所は8か所あり8人の子供を預かれるようだけどパッと見た所子供が二人しかいない。そのことに気づいてから孤児院全体を見てみると老朽化などが全然していなくむしろ建ってから1年もたっていないんじゃないかと思った。
一通りの案内をしてもらうとマリー先生から生活方針の説明を受けた
「今この孤児院で暮らしている子供はまだ二人なの、ルーグ君で三人目ね! まだ孤児院ができて日が浅いから私も探り探りで過ごしているけれど、何か置いてほしい物やこういう事がしたいと思ったら教えてちょうだい! 朝は8時に起きて朝ごはんを食べましょう! 10時からは勉強です! 一日に4時間ほど勉強の時間があるのでしっかり受けてくださいね? お昼は12時に取るので勉強は一度休憩に入ります。14時になれば畑の管理をみんなでやりましょう! 16時からは勉強再開です! 20時から寝る準備をし始めてくださいね。まだまだ出来立ての孤児院で未熟な院長ですが楽しく将来を考えて過ごしませんか?」
そんな提案を受け僕は少し前向きになれる気がした。僕にとって大切だったものを失った僕には後戻りも何もないから前にだけ進もう、たとえ先が何も見えない未来でも作っていこうと思えた。
そんな孤児院の生活は楽しかった、すでに居た子供二人はどちらも年下の少年少女で名前はウルとララだった。兄妹で孤児院に来たようでいつも仲がよさそうにしている。10歳と9歳のウルとララは12歳で得られるスキルに興味を持っていて僕に聞いてきた。
メインが魔力操作 サブが成長阻害だよと教えると兄妹どちらも首を傾げた。
「ルーグ兄ちゃんのスキルはなんでメインにサブスキルがあるの?」
こんな純粋な質問を受けたが、神様のすることなので僕たちがいくら考えた所で意味を持たない。スキルの現実をまた心に受け、少し気分が落ち込んだ。そんな話をしているとマリー先生が寄ってきて話に参加する。
「じゃあ明日はスキルに関する授業をしましょうか!」
そう笑顔で溢れんばかりの光を放つようなマリー先生を見て僕はスキルについて詳しく知りたいと思った。
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