第18話 素材探しの旅
「素材を集める為の世界は私が繋げます。そこで作成したい魔物の素材を集めて来て下さい」
「あ、あの……」
私が話し終えた辺りで士野足さんが申し訳無さそうに手を挙げた。
「こんな貴重な物を、新人の私も貰って大丈夫?もし私が裏切ったりしたら……」
「ああ、その点については心配ありません。その道具で生成されたダンジョンや魔物の権限は最終的に私にあるので、仮に仲間の中から裏切り者が現れても最悪の事態は発生しません」
「良かった。なら安心……」
士野足さんはほっとして胸を撫で下ろした。
「ボスモンスターはダンジョンの環境にも関わってくる……つまり、此処でどんなダンジョンにするか簡単に決めて、それに合う魔物を作らないといけないわけですね?」
「えーと、勇者のやる気が出で成長出来る、楽しいダンジョン……難しいなぁ」
『ボクはもう決めました!『初心者向けの森ダンジョン』を作ります!』
「私も大体決めた。テーマは『村とフィールドワーク』、だからボスは人型にする」
「うーん……あっ、そうだ!『色んな状態異常が起こる』変なダンジョンにしようかな!」
「じゃああたしはシンプルに、『魔法中心』のダンジョンにするよ、魔法に強い魔物を作らないとね」
「作るダンジョンは決まったようですね。では、そのダンジョンに合いそうな魔物を作成しましょう。その魔物一覧から……」
「可愛い子可愛い子可愛い子!!」
「ケモノケモノケモノケモノ」
先輩と士野足さんが謎の熱意を燃え上がらせながら本をめくっている。
「よし目星がついた!僕はとりあえずこの子作るよ!魔王さま!」
先輩はすぐに目星がついたようで、『幻獣』のページを見せながらこちらに近付いてきた。
「その素材でしたら……この星で取れる物が1番良いみたいですね。用が済んだらその場にゲートが現れるので、そのゲートを通って戻って来て下さい。では、行ってらっしゃいませ」
「行ってきまーす!!」
私が異世界へのゲートを開くと、先輩はハンマー片手にジャンプして飛び込んでいった。
「魔王様……」
士野足さんは開いた本で顔を隠しながら近付いて来た。
「えっと……ジョブジェムのカケラと『獣王の住処』がある所に行きたい……です」
「これはまた高難易度のダンジョンを選びましたね。分かりました、帰りの際は再びゲートが出るので、それを通って下さい。では行ってらっしゃいませ」
「……行ってきます……」
士野足さんはチラッと私を見てから異世界へのゲートを通った。
『僕は自分の居た世界に飛びます!』
「分かりました」
メエさんもゲートに入り、この場にトトさんと私の2人だけになった。
「3人とも行ったみたいだね」
トトさんは本とノートを閉じ、大きく伸びをした。
「あたしは少し休憩を挟んでから異世界に飛びます。私はココアを入れますが、魔王様の分もお作りしましょうか?」
「ありがとうございます。では、私の分も宜しくお願いします」
「はい」
トトさんは厨房に入り、2人分のココアを作り始めた。飲み物を作るトトさんは何だか少し嬉しそうだ。
「……魔王様、ついでに何か軽くお作りしましょうか?」
「いえ、もう晩御飯は済ませているので大丈夫ですよ。お気遣いなく」
「分かりました。あの……こうしていると何だか私達、新婚……」
と、トトさんが何か言いかけた所で
『すいませーん!忘れ物しました!』
忘れ物を取りに来たメエさんがこの場に戻った途端、トトさんの笑顔が一瞬で真顔に変わった。
『あっ、トトさん飲み物作ってるんですか?僕にも飲み物一つお願いします!』
「分かったよ……あんたはドブでいいかい?」
『全然良くないです!!』
「あっはっは!冗談だよ、あんたの分のココアも作ってあげるよ」
『ありがとうございます!』
トトさんは更に追加のココアを作り、3人分のココアを持ってテーブルにやって来た。
「はい、お待ち遠さま」
『やったー!!ココアだー!!ありがとうございます!!』
「トトさん、ありがとうございます」
私達はお礼を言い、トトさんからココアを受け取った。
『ココアうまーい!!』
メエさんは早速ココアをがぶ飲みし、その美味しさに感動しているようだ。
「トトさん、ココアを作るのがお上手ですね。甘さも丁度良くて飲みやすいです」
「ありがとうございます。魔王様にそう言って頂けて嬉しいです……!」
トトさんは私の隣に座り、嬉しそうにしながらゆっくりココアを飲んでいる。
「それにしても、魔王様に様々な世界を渡る力があったんですね……」
『魔王様は凄いんです!その気になればトトさんを元いた世界に返す事だって出来るんです!』
「……大根頭、あたしが転生前に何かあったのかもう忘れたのかい?」
『えーっと、確か……あっ、そっか。トトさんは腕利きの冒険者にやられたんでしたね……』
「そうだよ。もしあたしが元いた世界に戻ったら、またそいつにやられちまうかもしれないだろ」
『そうでした……でも、魔王様の居た世界なら魔物にとっても楽園ですから、トトさんも安全に暮らせますね!』
「まあ、そう言う事だよ。それよりも……魔王様、その異世界を渡る力があれば、他の世界に飛んでジェムを集める事も出来るのでは……?」
「いえ、そんな無粋な真似はしませんよ。私はあくまで、この世界にそぐわない力を所持した勇者達から能力を取り上げる、言わば人助けの名目でジェム集めを行ってますから。仮に取りに行くとしても、何の悪さもしてない人から取り上げませんよ」
「そうなんですね……所で、大根頭は忘れ物を取りに来たんじゃないのかい?」
『あっ、お気遣いなく!僕はトトさんが出て行った後でゆっくり忘れ物を回収して、そのまま異世界飛ぶので!』
「……そうかい。じゃあ、そろそろあたしも行くとするかね」
トトさんは空になったカップを魔法で回収し、綺麗にして元あった場所に収納した。
「魔王様、あたしは『冥府の統治者』の材料となる『ソウルメタル』を取りに行きます」
「分かりました。では、行ってらっしゃいませ」
「……はい、行ってきます」
トトさんは私に微笑むと、ゲートを通って異世界に向かった。
『さてと、僕はそろそろレベルを上げに異世界行かなくちゃ』
「おや、もしかしてメエさんの魔物は既に完成していたのですか?」
『はい!前の日に貰ったカードで作成しました!あっ、材料に雑草を使うのはやめたので安心して下さい!』
「安心しました。材料は何を使用したんですか?」
『僕が前に大輪の樹海で拾った貴重なスライムの実とマジックリーフです!貴重な素材で作成したので素晴らしい魔物が生まれました!おいで!』
メエさんは取り出したカードに魔力を込めた。すると……
『うー!!』
カードから可愛らしい少女の姿をした魔物が現れた。髪や衣類は青い葉っぱで出来ている。
「精霊草・アルラウネですか、これはまた珍しい魔物が生まれましたね」
『後はレベルを上げるだけです!手始めにこの子を荒くれゴブリンの群れにぶつけます!』
「ゴブリンが可哀想ですね。そのアルラウネさんなら中堅の冒険者も手こずるキメラも余裕で倒せますよ」
『肩慣らしです!最初は簡単な相手と戦い、次第に難しくしていきます!なので僕達はいつもの世界に行ってきます!』
「行ってらっしゃいませ」
メエさんはアルラウネと一緒に異世界のゲートに飛び込んだ。
数分後……
『忘れ物ー!!』
忘れ物を忘れて異世界に飛び込んだメエさんが再び帰って来た。
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