振る舞われた食べ物を苦手だって伝えるタイミング

磯貝フータ

振る舞われた食べ物を苦手だって伝えるタイミング

あれ、マジでわからないんだよね。

だってさ、前々から苦手な料理を伝えられずに

「はーい、どうぞー!」

って出されちゃったら

「実は嫌いなんです」

なんて言いづらいじゃん。

美味しい、ていうしかないじゃん。

食べ終わってから、後々になって

「実は苦手なんだよね」

て伝えたら、相手が「無理して食べたんだ…」てショックを受けちゃうかもしれないでしょ?

そう考えると、なかなか伝えられないんだよね。


…これね、おばあちゃんが亡くなったから言えるんだけど。

中学生の時、おばあちゃんがたまに家にきてはお昼のおやつに、って手作りの杏仁豆腐を出してくれたんだよ。

そのとき初めて、杏仁豆腐をいただいたんだけど、一口食べて苦手な味だなって思ったんだよね。

でも、感想聞かれて、子どもながらに

「美味しいよ」って気を遣って答えてさ。

そしたら、家に来てくれるたび、おばあちゃん家行くたびに杏仁豆腐振る舞ってくれて。

その度に毎回嘘ついて。

魔女の宅急便のニシンのパイみたいな感じだったね。



でも、そのおばあちゃんが大学生の頃に亡くなってね。

そしたら、自然と杏仁豆腐を食べる機会がなくなったんだよ。

元々、苦手だったし、別に食べる機会なんていらなかったんだけど。

この前、無性に杏仁豆腐が食べたくなって、真夜中のコンビニに行ったんだよ。

でね、少し寒くなってきた夜道を歩きながら家に帰って、買ってきた杏仁豆腐を食べてみたんだよ。

わざわざ食べたくなるくらいだから、杏仁豆腐の味が好きになってるかなって思ったんだけど、やっぱり俺は杏仁豆腐が好きじゃなかったんだ。

けど、ちょっと食べたら懐かしくなってさ。

確かに杏仁豆腐は好きじゃなかったけど、それは杏仁豆腐が好きじゃないだけで、おばあちゃんの作る杏仁豆腐が特別嫌だったわけじゃないんだって。

むしろ、コンビニで売られてる杏仁豆腐と遜色ないものを作ってくれてたんだって思ったんだ。

なんだか無性におばあちゃんに会って、ありがとうって言いたくなったんだよね。


それで最初の話題に戻るんだけど、一生懸命作ってくれたけど、口に合わなかったものっていつ伝えればいいのかな?

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振る舞われた食べ物を苦手だって伝えるタイミング 磯貝フータ @huta_isogai

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