第4話

   

 いくつかのお店に入って、2時間ほど過ごしたあと

「すっかり暗くなっちゃったね。でも、まだ最終の電車には間に合うし、ちゃんと家まで帰れるわ」

「だといいけどな……」

「帰れるに決まってるでしょ。正志まさし、何言ってるの?」

 そんな言葉を交わしながら、俺たちは秋葉原の駅へと急いでいた。


 秋葉原は活気のある街らしく、遅い時間になっても通行人の数は多い。ちょうど前方から大きな紙袋を抱えた男が歩いてきて、俺たち二人とぶつかりそうになる。

「ほら、正志まさし。こっちに寄って」

 香織かおりがグイッと、俺を横に引っ張った。その甲斐もあって、あくまでも「ぶつかりそう」というだけで、ぶつからずに済んだのだが……。

 すれ違いざま、俺は腹部に焼けつくような痛みを感じて、その場に倒れ込んでしまう。

正志まさし!」

 香織かおりが悲鳴を上げる中。

 痛む箇所に右手を当てて、そちらに視線を向けると、俺の手は真っ赤に濡れていた。左手も重ねて両手で押さえようとしても手が足りず、血がドクドクと吹き出してくる。

 ああ、通り魔に刺されたのだ。

 そう悟ると同時に視界が暗転し、俺は意識を失って……。


「……起きてよ、正志まさし! こんなとこで寝ないでよ!」

 香織かおりに揺すられて、俺の意識が戻った時。

 もはや体に傷はなく、武蔵野ミュージアム近くのベンチに座っていた。

 時計を確認するまでもなく、周囲は明るい。まだお昼前だった。

   

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