本当かな?

 あれが本当に巨大隕石で、それが地球にぶつかるだなんて、そんなのはただの冗談だ。ウソに決まってる。

 もし、それが本当だったなら、今ごろはニュースで大騒ぎしているハズだ。それなのに、どのチャンネルでやっているニュースを見たって隕石の「い」の字……いいや、ここは控えめに、「いんせ」の字すら出てこない。見慣れたアナウンサーは、明日の天気まで読み上げている。

 確かにケンは話し方からして変わり者で、何か、他の人が知らないようなことを知っていそうな雰囲気がある。だけど、それにしたってそんなに重大なことを大人に言わずに、わざわざぼくをつかまえて話しただなんて、そもそも非現実的じゃないか。

 窓を見ると、とても平和そうな青空には、まだあの飛行機が飛んでいる。いや、あれから時間がたっているから、もしかしたら別の飛行機なのかも知れない。

 だけどあれが――本当に巨大隕石なのだとしたら? 巨大隕石がゆっくりと地球に向かってきているのだとしたら――。

 絶対にあり得ない。分かってはいるのに、どうしようもなく不安になった。

 あの後ケンとは、学校の近くの公園で落ち合う約束をして別れた。もちろん、ケンの一方的な提案だ。約束の時間は四時。あと十分と少ししかないけど、自転車に乗っていけば公園までは五分もかからないから、時間の面に問題ない。

 どうしようかな、行った方がいいかな。これって絶対にからかわれてるんだから、もし行ったって「キミはバカだなあ」ってけなされるだけかも知れない。それに、明日までの宿題だってまだやってない。

 だけどやっぱり、ちゃんと断ったわけじゃないんだから、行かないとまずいよなぁ。

 テレビの電源を消して、ぼくは立ち上がった。

「ちょっと遊びに行ってくるよ」

 カレーの匂いがする台所に向かって言うと、ぼくは返事を待たずに家を飛び出した。門限が五時だから、今から遊びに行くなんていうこと自体が気まずいし、それに「宿題はやったの?」なんて言われたらおしまいだ。ぼくの意思なんかとは関係なしに、ケンとの約束を破ることになってしまう。

 玄関が閉まる音も聞かずに愛用の自転車にまたがると、腰を浮かせて力いっぱいペダルを踏んだ。

 ティーシャツのそでから入ってくる風が冷たくて、少し寒かった。

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