第11話 第三ステージ
大和は出口に繋がる扉は開かず、階段を上っていく。スマホの画像に目を落とし、表示されたアイコンを確認した。
「やっぱり『アイテム』が置いてあるな。全部で二つか」
画面を見る限り、壁際と柱の側に"アイテム"のアイコンが表示されている。
アイテムがあることには気づいていたが、トラップラインの内側にあったため、手が出せなかった。だが、今は敵を全て倒しているので安全だ。
今のうちに回収しておこう。大和は柱に近づき、置いてある銀のジェラルミンケースを開ける。
「また食料か……まあ、いいか。いくらあっても」
非常食や菓子類、ペットボトルが入った巾着を取り出し、スマホを操作してアイテム欄に『収納』した。
さらに壁際にあるジェラルミンケースも開ける。そこには金の延べ棒が五つ入っていた。
「こんなのもあるのか?」
こちらも収納すると、アイテム欄に『金塊』と表示され、一本100万。五本で計500万と書かれている。
換金できるようだ。金塊をタップすると『換金しますか? Y/N』と出でくる。
大和は《YES》を押して、すぐに金銭(ポイント)に変えた。
「他には無さそうだな。取りあえず出るか」
大和は再び階段を下り、鉄扉のハンドルに手をかけた。
右に回して重い扉を開ける。ギギギギギと軋みながらゆっくりと開き、大和は中に入って扉を閉める。
見渡せば、先ほどのセーフティーゾーンと同じような狭い部屋だ。
地べたに座り、あぐらをかいてスマホを見る。
「ポイントは……入ってるな。
第一ステージ分と合わせて2500万円。資産が200億ある大和に取っては
大和はアイテム購入欄に目を移す。
この額ならそれなりの武器が買えると思い、購入可能な物を確認していく。
「これなんかいいんじゃないか?」
目についたのは【MGL140グレネードランチャー】だ。リボルバー六連式で、黒とベージュ色のコントラストが美しく、とてもかっこいい。
威力が強そうで買いたかったが――
「うわ! 本体が2500万ちょうどか……弾が買えないな」
弾が買えなければ意味がない。今回は諦めることにした。
「まあ、いい。次のステージについて調べるか」
大和は立ち上がってハンドルに手をかけ、ゆっくりと扉を開く。セーフティーゾーンから出て、薄暗い第三ステージへ足を進めた。
◇◇◇
西森たちは恐る恐る扉を開く。中は薄暗く、柱がいくつも並んでいる。
だが第一、第二ステージより、明らかに狭い部屋だった。光源も弱く、部屋全体が青白く見える。
先に入った西森は喉を鳴らす。
部屋の中央になにかいた。薄暗くてハッキリは見えないが、人のようだ。
「お、おい! 誰かいやがるぞ!」
西森の言葉に、後ろからついてきた葉山が眉を寄せる。
「また
「いや……もっとデカイ!」
青柳や絵美や結菜たちも部屋に入ってくる。部屋の暗さと不気味さに身をすくめ、辺りを見回しながら身を寄せあう。
全員が第三ステージに入ると、自動的に鉄扉が閉まった。
小久保が開けようとするが、もうビクともしない。退路は無いということだ。
「全員、広がれ! 左右から出口を目指すぞ」
正面を見れば、人影のさらに向こう。出口の扉が見える。あそこまで行ければこのステージもクリアとなるが、楽観的に考える者はいない。
敵がどれだけいるのか、どんな罠が仕掛けられているのか、まったく分からないからだ。
全員が慎重に足を運ぶ。次第に人影の全貌が見えてくる。
人間ではない。頭のない銅像のような物が仁王立ちしていた。
体高は3メートルほど、右手に大剣を持ち、鎧を着こんだ体は、全身が青い金属でできているように見える。
まったく動く様子はなかった。西森たちはそっと脇を抜け、出口へと向かう。
他に敵はいない。扉に辿り着いた西森はすぐに開けようとしが――
「えっ!? なんだこれ?」
固まってしまった西森の横から、葉山が扉を覗き見る。
「これは……」
葉山もまた動きを止めた。扉は今までのようなハンドル式ではない。扉の横に機械がある『電子ロック』式の扉だった。
「こんなのありかよ!? どうやって開けりゃあいいんだ?」
パニくる西森の後ろから、青柳や他の参加者もやってくる。
「ちょっと、どうしたのよ? 開かないの!?」
「いえ……開けるのに時間が掛かりそうなんですよ」
葉山が眼鏡を押し上げ、後ろを振り向くと、そこには信じられない光景が広がっていた。
まったく動かなかった銅像が、剣を振り上げ、間近に迫っていた。
「う、後ろーーーー!!」
「え!?」
青柳たちが振り返ると、銅像が剣を振り下ろした。
床が割れる衝撃音。見れば参加者の一人、体格のいいおかっぱ頭の男性が真っ二つにされ血を噴き出している。
「きゃあああああああああああああ!!」
青柳が絶叫し、足がもつれてその場に倒れる。全員にショックと動揺が広がり、どうしていいか分からなくなる。
そんな中、声を上げたのは葉山だった。
「みんな、止まっちゃダメだ。散開してヤツを攻撃するんだ!」
全員がハッと目を覚まし、それぞれ広がって銅像を囲む。葉山、青柳、西森は銃を構え、何発もの弾丸を銅像に撃ち込んだ。
だが、高い音を鳴らし弾き返される。
銅像の体は鋼鉄並みの強度があるようだ。何発撃っても効かないことに、西森は発狂したように叫ぶ。
「なんなんだよ、こいつは!? 全然銃が効かないじゃねーか!!」
せっかく買った銃がなんの役にも立たない。発砲しながら後ずさり、銅像から距離を取る。
葉山の散弾銃でも、青柳の拳銃でも傷一つ付けられなかった。
他の面々も戸惑っていると、銅像が振るった剣で若い女性の頭が飛ぶ。課金グループにいた女子大生だ。
至る所から悲鳴が上がる。
どうしていいか分からず逃げ惑う者、震えたままその場に立ち尽くす者。絶望が辺りを支配する。
銅像はその巨体に似合わず素早く移動し、参加者一人の胴体を斬り裂いた。
また一人死んでゆく。そんな中、葉山は振り返り、扉の横に付いた電子ロックを見る。単純なナンバー式のキーロック、それも三桁だけ。
これなら数分で解ける、と思った葉山は大声を上げた。
「この扉は僕が開きます! 五分、五分でいい。銅像の気を引いてこちらに近づけないようにして下さい!」
全員が顔を見交わす中、西森の顔は青ざめていた。
「五分って……あいつを五分引き付けるのか?」
ゆっくりと歩いてくる銅像。いかなる攻撃も効かない化物を引き付けるなど、自殺行為に等しい。
それでもやるしかない。
全員が覚悟を決め、銅像の周りを取り囲んだ。
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