04 ENDmarker.

 血だらけの彼が第2倉庫に転がっていたのは、そういう日だった。いつものように彼のことを考えながら過ごして。たまたまご飯を買いに行って、その帰り。


 そういうのがまったく分からないけど、とにかく、ぐちゃぐちゃになってるのは、分かった。


「よっ」


 彼がにこっと笑う。なんか、なんとなく、楽しそうだった。


 隣に座るどころじゃなかったので、すぐに助けを。


「ああ、いらない。増援来るから」


「うそ」


 でも、助けは呼べなかった。そういうレベルじゃない。

 とりあえず分からないまま、彼の身体にふれる。どうしようもなかった。止血という概念が存在しようもない、ぐちゃぐちゃな状態。


「いいな、これ」


 彼がもたれてきたので、抱きしめる。力加減を少しでも間違えたら、彼の身体がちぎれてしまいそうだった。


「たのしかったな」


「うん」


 彼。なぜか落ち着いていて、声も小さいけどはっきりしてる。それが、なんとなく分かる。


「弁当。美味かったか?」


「おいしかったよ。とっても。また作ってよ」


 返答はない。目を閉じてる。


 そうやって。


 しばらく。


 過ぎた。


 腕の中の彼は、もう。


 このまま。

 彼のことを覚えているまま、わたしも一緒にいたかった。何もない。誰も来ない。この第2倉庫の片隅で。ひっそりと。彼と一緒に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る