第2話

 彼がいる。表情のない感じで。


 でも、わたしに気付いて、一瞬、にこっと笑った。そしてまた表情がなくなる。


 わたしは、この喧騒を気にしないようにするために、彼のことを眺めるようになった。表情はない。というか、たぶん、何か考えてる。ときどき髪に隠れた耳に手を当てて、何か言ってる。たぶん、何か通信してるんだと思う。


 そして、第2倉庫に行く。

 さびれた外観だけど、中に入るとわたしが調えた小綺麗な内装。


 彼がいる。


 お弁当を、たくさん持って。


「台所。作ってみた」


「いいね。とても良い」


 彼が嬉しそうにしている。お弁当。温めたのか、なんかほかほかしていて、おいしい。


「今日もギャルの中に紛れて修行中?」


「うん。何事も耐久の一言。そっちは?」


「任務。そろそろ佳境」


「そっか」


 そういう、なんてことはない、1日。


 そして彼は、わたしの前から消えた。

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