第13話

 島から遥か北に位置する大陸では灰色の霧が立ちこみ、無数のパイプが大地に張り巡らされていた。

 ドクン、ドクンというパイプの中を何かが流れる不気味な音が、辺りにこだましていた。


 その中央にそびえ立つ金属の瓦礫の城塞から、南の空を見つめる者がいた。黒い甲冑を身に纏った身長三メートルは超えるであろう女性の姿。

 その背後でひざまずく男が言葉を発した。


「レベルクイーン、お呼びでしょうか」

「南の方角でわれ感応聴覚バイオセンサーが凄まじい波動を感知した」

「スペースコクーンから雷光らいこうが照射されたようです」

「我らがいかなる手を下しても墜とせぬ軌道要塞、進化を司ると言われる人間どもが残した最後の遺物か……。して、その雷はどこに落ちた?」


「南方六万キロの島に」

「虫けらどもの棲家すみかか。そこには何かがあるかもしれぬ、我々がさらなる進化を遂げるための遺伝子情報、新たな哺乳類の波動を感じた……」

「それでは調査に向かわせますか?」

「あの波動は我と同じ生体能力バイオスキルを有した生命体。よもや不肖ふしょうの息子のものではあるまいな」

「変異遺伝により城外に追放されたご子息ですか、彼は消息を絶っております」

「何か関係があるかもしれぬ。我が直接おもむくとするか」

「不良品のためにわざわざ最高性能種のあなた様が出向く必要はないのでは?」

「不良……。 我の遺伝子を侮辱するか」

「いえ、ただ変異体は本来廃棄されるべきもの」

「変異体と呼ばれるものが新たな生体能力を生みだしているかもしれぬ。それを確かめておきたい」

「仰せのままに……」

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