第8話

 フミコはカジトの制止を無視してバグマドに立ち向かっていく。

 バグマドから無数の触手が放出され、フミコに襲いかかる。ジェットボードを巧みに操り隙間を縫って近づこうとしたが、やがて一本の触手がフミコの脇腹に突き刺さり、その勢いで空高く飛ばされた。


「フミコ!」

 ザブンと海に落ちるとカジトも急いで飛び込み、赤く揺らぐ波を頼りに沈みゆくフミコを探す。フミコを見つけると手を掴み、たぐり寄せた。

 ――フミコ、なぜヒミコと同じ道を歩んだ

 ――大切な人を失う苦しみをもう一度、味あわせるつもりか


 「うおあああああああ」

 海中でぶくぶくと息を吐きながら、悲鳴を上げるとカジトは魔銛を自らの胸に刺した。


 魔銛に刻まれた文様が再び光り出す。

 [INTERCONNECTED相互接続完了]


 遥か天空の星からいかづちが暗雲を切り裂き、降り注いできた。

 バリバリという轟音とともに魔銛の矢先に到達すると、雷光が二人の体を包み込み、膨張していく。

 光は際限なく膨張し海面に達するとパアと弾け、辺りが白い霧に包まれる。やがて霧の中から巨大な物体の姿がうっすらと浮かび上がった。


 鋭い銀色の角が頭部から張り出した異形の鯨類げいるい、一角鯨。

 

 ――フィィィィィィィィ

 声なのか音なのか、形容しがたい異様な音の波動が霧を一気に離散させ、尾ヒレをあおぎながらバグマドめがけて突進する。

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