第6話
その時、ズゥゥゥンという音が島中に鳴り響き、森の木々を揺らした。
「なにごとじゃ?」
ポッ、ポッと再び炎が灯りはじめ、ふわりふわりと点滅を繰り返した。
「え、何?
「案ずるな、長老たちじゃ」
――激しい津波が北の岸壁に押し寄せた、バグマドの
「もう来おったか、洪水に巻き込まれんよう島民を高台へ避難させよ」
老婆は立ち上がると、祭壇にあった魔銛を杖代わりに御嶽の裏にある獣道に足を向けた。フミコも恐る恐るその後についた。
道を抜けると海が望める岸壁に辿りつく。水平線に目を向けると、月明かりに怪しく照らされた巨大な異形の影が闇夜に浮かびあがり、大きな目玉がひとつこちらをじっと見つめていた。
「あれがバグマド……」
「海の哺乳類がいなくなった今、あやつの次の獲物はこの島にいる我々じゃ。あれを滅ぼせるのは一角鯨しかおらん」
「バグマドを倒すにはどうすればいいの?」
「この銛をもって一角鯨を呼び起こすのじゃ」
老婆は手に持っていた魔銛を差し出す。フミコが両手でその青銅色の銛を握ると、刻まれた文様が妖しく光り出した。
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「魔銛が共鳴しておる、適正がある証拠じゃ。お主ならヒミコが成しえなかったことを果たせるかもしれぬ」
「わかった、この島は私が守る。オヤジはいつも私に母さんの面影ばかり見ていた。これで私も一人の人間だということを認めさせたい」
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