第5話

「ばあちゃん」

「フミコか、こんな夜遅くに何の用じゃ」

「オヤジがさあ、母さんのこと何も教えてくれないんだ。私に何か隠している?」

「フミコももう十八か、教えてもよい頃合いじゃが……聞く覚悟はあるか?」

「何があったか知りたい。いつも夢を見る、手を差し伸べて優しい声で語りかけてくれるの」


「ヒミコは魔銛人じゃった……。十八年前、島がバグマドに襲われたとき、一角鯨を操り撃退したが帰らぬ者となった」

「どうして母さんは命を落とすことに?」

「一角鯨に……吸収された。あの怪物を操るに見合う資質が足りんかった。バグマドが近づいておる、魔銛人を決めなくてはならんのだが……フミコ、お主しかおらん」

「私がその魔銛人に?」

「一角鯨を呼び起こすには鯨類げいるいとの共鳴能力、そして力となる『怒り』を与える必要がある。それにはお主が一番適任じゃ。わしとて可愛い孫を人柱などにしたくはないが、島を守るのが我々一族のお役目」


「その一角鯨は今どこに?」

「すぐ近くにおる。それは……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る