第19話

 母親が帰宅する前に私は出ていきます。いつも遊ぶのは家の中です。実際のところ、私こそ外で自由に遊びたかったのです。天使への想いが募るたび、私は天使と公園や遊園地やピクニックへ行きたくなりました。


 しかし同じてつは二度と踏むまいと私は決めたのです。天使と長く共に過ごせるよう、私は欲望を押し潰していたのです。


 欲望とは際限がありません。願望を叶えるとそれは日常になり、その日常に飽きてまた願望が生まれる。止めどないことはわかっているのです。


 それでも私は帰らねばならない。両親へ手渡さなければならない。親と呼ぶのに相応ふさわしくない親どもに。それがとても理不尽に思えて仕方がないのです。


 しかし天使とて、欲望の変移があるのでしょう。私と過ごす日常が当たり前になり、両親と過ごす時間を稀少に感じていくのです。両親と渋々出掛けなければならなかった行事は、待ち遠しい楽しみに変わっていきます。


 天使は徐々に両親へのわだかまりを解消し、彼らを理解するようになっていったのです。たった数ヶ月の出来事です。たったそれだけの短期間で、天使は急激に成長を遂げていったのです。恐ろしいほどです。幼さとは恐ろしいものです。

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