第18話

 両親の話もしました。父親は帰宅が遅く、帰らない日も間々あるというのです。よく母親が吐き捨てるように父親の陰口をつぶやいているようでした。そのせいか母親は昼間も留守をして不貞を働いている様子でした。


 天使に構うことなく、好き放題に遊び歩く親の神経が知れません。この世で最も可愛い天使をどうして放っておけるのか、頭がおかしいに違いありません。親にとってこの家は単なる寝床なのでしょうか。


 家の内装は品性を重視していて、西洋風の家具には家主の優雅を気取るこだわりを感じます。テレビの横には世界遺産のDVDが並べられ、書棚は植物図鑑や生物事典で埋め尽くされていました。キッチンの食器棚には陶器のティーセットやバカラのグラスまでありました。


 しかしその富裕な空間の全ては放置されたままに埃が溜まり、数年前から止まったままのように生活の匂いを感じませんでした。本当にまるで天使がひとりで住んでいる古城のような錯覚すらありました。


 衛生に過敏になる親が増えるかたわらで、余りにも時代に逆行した杜撰ずさんな育児を垣間見させられ、耐え難い嫌悪を覚えました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る