第17話

 天使は私にたくさんの話をしてくれました。学校では国語と算数が得意だが体育は苦手な話、校庭で飼うウサギの話、担任の先生がおっちょこちょいでいつも教壇につまずく話、ハーモニカを吹きすぎてクラクラした話、給食の茄子なすを残した話。


 そしてとりわけ出てくる体の大きい男の子の話。その子にスカートをめくられた話、教科書に落書きされた話、「バカ」と言われた話、ランドセルを木の枝に引っかけて意地悪をされた話。天使の話にはその子が繰り返し登場しました。


 私はその子に沸々と怒りをおぼえ、その子におとなしくしてほしいかと天使にくと、すぐにうなずきました。


 天使は嫌がっているのです。私のすることはひとつです。


 私は天使と別れてからそいつを直ちに突き止め、人目のつかない河川敷でそいつの腕をへし折ってやりました。右利きだったようなので、斟酌しんしゃくを加えて左腕にしてやりました。


 それからというもの、そいつは小動物のようにおとなしくなったそうで、天使も不思議がっていました。


 私はそれを想像して笑いが止まりませんでした。いつまでもいつまでも想像して笑っていました。

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