第8話

 魂を奪われ抜け殻と化した私は天使の足取りを朦朧もうろうと追いました。十メートル程の距離をとり、天使の歩幅に合わせて追尾していきました。


 そうしてクリーム色の立派な一軒家の敷地へと天使は入っていきました。ガレージには紺色のBMWが停まり、芝生の庭にはブランコが置いてありました。外観だけでも裕福さを存分にひけらかしていました。


 天使は首から提げた鍵を差し込んで家の中へと入っていきました。そのとき天使にわずかながらためらう挙動があったことを私は見逃しませんでした。

 そこで母親が出迎えて天使が笑顔にでもなってくれたなら、付け入る隙の無さを痛烈に感じて、私はとぼとぼとその場をあとにしたのかもしれません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る