第4話

 高校を入学して私は、自分でも驚くほどに真面目になりました。勉学に興味が湧いたとの意味ではありません。地元の中学とは友達の質が違っていて、周りの友人に染められて私も相応の真面目さが備わっていったのだと思います。何よりも父にまた喜ばれたいと密かに望み、優等生を演じていたのかもしれません。


 思えばこの時代にクラブ活動でもしていれば、余計なガス溜まりを抑制できたのかもしれません。怠惰な生活をしない凝り固まった規則正しさは、私にはひどく窮屈で、重たい鎧を無理やり着させられて戦地へ赴いているようでした。


 そんな抑圧が私の体を締め付けると同時に、圧縮できない内面が脆弱ぜいじゃくな体を食い破って膨れ上がっていったのです。思春期におけるみなぎる欲望、その時に私は己の欲求志向に押し潰され始めたのです。品行方正な殻に肉体を閉じ込めていても、心に巣食うどす黒い腫瘍がうずき出していくような感覚でした。


 この当時は自分の欲求志向は異常だと自覚していたわけではありません。私はただ、でる対象が欲しかっただけです。独りっ子でしたし、弟や妹がいれば状況は変わっていたでしょう。


 最初の動機は些細な事です。犬や猫を飼う感覚となんら変わりません。それが段々と次のステップへ登り、そこで更なる次の段階を追い求めたのです。


 しかしその高みの到達点は、社会的ルールの範疇はんちゅうでは許されるものでなかっただけです。

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