第11話 『真実の愛』の尊さを示してください!
殿下、カトリーナ嬢、どうしてそんなに絶望的な顔をしていらっしゃるんですの?
ああ、なるほど。それはそうですわね。
わたくし、陛下に天にも昇るほどしあわせにしていただいたので、おふたかたの心情を思いやることを忘れておりましたわ。ごめんあそばせ。
おふたりは国家に対して大罪を犯した罪人の一族ですから本来は処刑される身ですものね。
しかも貴族としてもっていた全ての特権と臣民としての権利を剥奪されておりますから、その身分は法律上では家畜以下の存在。
心が不安で押し潰されそうなのも仕方ありませんわね。
ですが、心配なさることはありませんわ。お二人ともその身は安全ですから。
おふたかたの衣食住はわたくしが責任をもって保障させていただきますので。
わたくしのポケットマネーで賄うので、おふたかたが国家の資産を横領していた時ほどの贅沢はさせてあげられませんけど。
王都の植物園の中に、おふたりのためにガラス張りの新居を用意させていただきますから住居の心配はありませんのよ。
食事も、王宮に勤めていた料理人3人を専属としてつけますから心配ありませんわ。食材も予算の範囲でですが上等なものを用意しますわ。
御衣装も、お二方のためにわたくしがコーディネートしたものを毎日提供しますから、以前よりセンスも良く似合うものを着られますわよ。
侍女も選りすぐりの専属侍女を10人つけますわ。
『真実の愛』を妨げる全ての脅威からおふたりを守るため、10人の侍女は全て格闘技に精通したものですから大船に乗ったつもりでいてくださいまし。
お二人程度なら小指一本で制圧できる選りすぐりの使い手ばかりですわ。
ええ、聞き違いではありませんわ。ガラス張りの新居ですわ。
そうでなければおふたりの『真実の愛』に満ちた尊み溢れる生活を多くの方々に公開できないではありませんか。
わたくしのような『真実の愛』を知らぬ哀れな者達に、『真実の愛』というものがいかに素晴らしいかを、尊いものかを、その身をもって示していただこうと思っておりますのよ。
全国民、いえ、外国の方々にまで、おふたりの『真実の愛』を無料で公開させていただきますわ。
『真実の愛』の生活を、我々哀れな凡人にたっぷりと教えてくださいまし。
その美しさ素晴らしさを。尊みを。
おふたりの起床から就寝まで。食事からお着替えからご不浄から会話から娯楽から夜に行われる愛の秘め事に至るまで全てを公開していただきますわ。
会話は外から聞こえるようにしておりますから、お互いを傷つけ合うだけの醜い喧嘩などなさらぬように。
あ、今のはいらぬ心配ですわね。
だっておふたりには『真実の愛』があるんですもの。
もちろん、おふたりの間に交わされる全ての『真実の愛』に満ちた日常は記録させていただきますわ。
おふたりのあいだにお子が出来ても心配することはありませんわ。
おふたりのお子ですから、さぞやおうつくしくなるでございましょうからね。
幼い頃から、最高の教育と最高の愛情で、おふたりとはちがって中身まで麗しく素晴らしい姫や貴公子に育ててみせますもの。
少なくともおふたりがお育てになるより真っ当なお子になりますわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます