第3話 おふたりこそが運命ですわ!
わたくしが殿下のお嫁さんになりたいとおねだりした?
だからこの婚約が結ばれた?
あらあら。根も葉もない話ですわ。
殿下の母君である王妃様がそう仰っていた?
ああなるほど。
王妃様は、隣国の王女で才女でもあったわたくしの母に勝手に劣等感をもっていらっしゃいますから、そんなありもしない戯言を殿下に吹き込んだのでしょうが……困ったのものですわ。
そもそも殿下との婚約前、わたくしには将来を誓い合った方がいたんですのよ。
容姿以外は全ての点で、殿下と比べものにならぬ素晴らしいお方が。
それを王命で無慈悲に引き裂かれたのですもの。殿下に向ける愛などチリひとつ分すらあるわけありませんわ。
ご容姿が素晴らしい貴公子だとは思っておりましたが、そんなの絵姿で十分ですもの。
というか殿下に関しては絵姿だけのほうが良かったですわ。
だって絵姿だけならうんざりする中身を知らずに済みますもの。
お話は自慢と高慢と増長ばかりで知性も品性のひとかけらもなく、ご自慢の剣技も地位のせいで勝ちを譲ってもらっているのに気づかない節穴っぷり。
せめて勉学だけでも出来ればまだしも、下級クラス相当の成績を王族の地位を振りかざし教職員の方々を脅して最上位クラスに居座る恥知らずっぷり。
しかも、それを無自覚にやっているという最低っぷり。
王太子であるにも関わらず、政治にも関心を示さず、下々をただ見下げて思いやりもなく、自分の耳に心地よいお世辞やおべっかが大好きという、将来暗君間違いなしの救いなさっぷり。
しかも、まさに今も、学生一同の晴れの門出である卒業パーティを、個人の顕示欲を満たすためだけにぶち壊し、周囲から珍奇で哀れな動物を見る目で見られているのにも気づかぬ鈍感っぷり。
いくらご容姿が空前絶後に麗しくても、こんな下劣で愚かな殿方をどうやって愛するというのか……愛さなければ世界が滅ぶと言われたって無理というものですわ。
ああ。そういう怒った顔もステキですわ! 尊い! 尊すぎますわ!
神話の英雄を思わせる御尊顔。ああ、本当にご容姿だけは眼福ですわ!
みなさま! 全部残らず全瞬間を撮ってくださいましね。お願いしますわ。
わたくし、こんな能のない容姿だけの空っぽな殿方と結婚するのかと人生に絶望していましたの。
愛されてもいないのに、義務として子供を産まされる上に、日々の実務は全て押しつけられる奴隷のような日々が待っているのだと。
そんな時、カトリーナ嬢が現れたのですわ! あの出現は奇跡でしたわ。
お二人が初めて並んだ瞬間の恍惚! 美しさと美しさのマリアァァァァジュッ!
わたくしには判ったんですの、このふたりが並ぶべきだって!
殿下とわたくしとではなく、殿下とカトリーナ嬢こそが!
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