第2話 まぁ! それは大変ですわね!


 はふぅ……ステキ。ステキすぎて語彙がなくなってしまいますわ。


 殿下とカトリーナ嬢。何度見ても絵になりますわ!

 後で写真を元にして絵画にしてわたくしの部屋に飾りますわ!

 そうですわ! かの高名なデルピエロ画伯に描いていただきましょう!


 でも、もう少し華やぎを加えたいところですわね……。

 背景一面に大輪の花々をかざったら更に素晴らしいですわね……。


 ひらめきましたわ!


 殿下、カトリーナ嬢、今から追加で花を用意しますので、できればもう一度、わたくしに対してビシッと婚約破棄を告げてくださいませんか。そのほうがより美しい仕上がりになりますから!


 ? なにを怒っていらっしゃるのですか? え? カトリーナ嬢に謝れ?

 わたくしがカトリーナ嬢をいじめた?

 階段から突き落とした? 噴水に叩き込まれた?


 それは大変! ぜひ犯人を見つけなければなりませんわね!


 わたくしではありませんわ。

 わたくし、カトリーナ嬢をいじめてなどおりませんもの。

 神に誓って国王陛下に誓ってしておりませんわ。

 いじめなどする理由がありませんもの。


 認めたら許してくださるのですか?

 カトリーナ嬢ってばやさしいですわね! 流石は殿下の『真実の愛』で運命のツガイですわね!

 ですが、そう言われましても困ってしまいますわ。


 おふたりはとってもお似合いですもの。

 わたくしではしても、憎むなどしておりませんわよ。

 お似合いのおふたりに、わたくしごときが嫉妬などするはずがありませんわ。


 あら! あらあら! カトリーナ嬢どうなさったんですの?

 そんなふうにお顔をゆがめて……もしかして怒っていらっしゃるの?


 美しい方の醜い怒りの表情……それはそれで素晴らしいですわね!

 また新たな美をわたくしに見せてくださいますのね! それもいただかせてもらいますわ!

 さぁみなさん! どんどん撮ってくださいませ!


 は? わたくしが殿下を愛している? だからカトリーナ嬢を嫉妬していじめを?


 あははは。


 あら、すみません。筆頭公爵家の令嬢ともあろうわたくしが、はしたない笑い方をしてしまいましたわ。

 だって、殿下があんまりにも面白いことを仰るんですもの。


 わたくしごときが殿下を愛するわけがないではありませんか!

 そもそも、カトリーナ嬢が現れるまで、わたくし殿下になんの関心ももっておりませんでしたし。


 あたりまえですわ。

 だってわたくしと殿下の婚約は、我が筆頭公爵家と没落寸前の王家の単なる政略結婚ですもの。

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