「普通そこで成仏してハッピーエンドなんだがな」


 やれやれとため息をついて祖父が幽霊である自分の息子を見つめた。泊まりに来ていた孫が遊園地の出来事を泣きながら話し、一晩泊まったあと先程帰っていった。自分を責める事に区切りをつけて将来の目標まで見つけたのだから、孫はまあハッピーエンドでよろしい。よろしくないのは全く成仏していない息子だ。


「いや、あそこで成仏したように見せるのが目的だったから別にいい」

「なんで成仏しないんだお前は」

「だって! えっちゃん美人に成長してる! 佳奈ちゃんそっくり!」

「えっちゃんほとんど霊感がないみたいだから、佳奈さんの血を濃く受けついでるんだろ。そりゃそっくりになるわな」

「悪い虫が寄ってくるかもしれないし、これから母子二人で受験乗り越えなきゃいけないんだぞ。心配で心配で。進学して就職して結婚だってするだろう。花嫁姿みたい! えっちゃんと結婚する男はもちろん頭良くて顔も良くて収入が高くてえっちゃんを一番大事にしてくれて、それから」


 はあ~、っと祖父は大きなため息をつく。お盆に息子のマシンガントークを聞くのは毎年恒例行事だ。内弁慶というやつで、自分たちの前では大統領選挙の候補者のように延々しゃべるというのに妻と娘の前では緊張して無口キャラとなっていた。

 結局息子が成仏できないのは未練があるからというよりも、生前から強い霊力があったのでこの世にとどまる力も強かったらしい。

 息子が死んでから今の今までずっと息子の魂と会話をしてきた。最初は妻と娘は見えないらしいとしょんぼりした様子だったのだが、逆に見えてしまうとそれはそれで複雑な感情抱いてしまうかもしれないからとこっそり見守ると言っていたのに。

 娘がいつまでも自分のせいで父が死んだと思い込んでいるのをなんとかしたいからと、この辺一帯の浮遊霊の皆さんに協力してもらって何とかの演出を考えたのだが。


「それでお前どうするんだこの先」

「今まで通りこっそり見守る。あと経済的なことを考えれば佳奈ちゃんには再婚してほしい。あんなに美人で家庭的なんだ、婚活すれば秒で男が集まるに決まってる。佳奈ちゃんと再婚するのはもちろん頭が良くて顔も良くて収入が高くて佳奈ちゃんを一番大事にしてくれて、それから」


 普通それ結婚したい女性側の意見だろうがと思ったが、一度こうなると息子は止まらないのでもう好きにしゃべらせることにした。


「えっちゃんは約束を守って天国行ったんだって思ってるのになあ」

「俺にとっての約束はえっちゃんを遊園地に連れて行って口をきいてもらうことだからいいんだよ!」


 そっちかい。はあ、っと祖父とスイカを持ってきた祖母はため息をついた。いざとなったら知り合いのお寺の住職がガチで霊力強い人なので、数珠でブン殴ってあの世に行ってもらおうと思っている。

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約束を果たそう、パパ aqri @rala37564

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